傷物語 冷血編 ―― 阿良々木暦と「上位の存在」

傷物語やっと完結。いやーーーーーー、羽川に始まり羽川に終わったって感じでとてもよかったんじゃーーーーないでーーーしょうかーーーー。いやーーー、映画館であんな悶えたの初めてだわ、勘弁しろよ。。。

なにはともあれ、ねぇ。あのーー、今月の日経エンタで『傷物語』の特集が組まれてて、キャストインタビューとかもあったわけですよ。その中で神谷さんが「おそらくTVアニメで放送できなかった理由であろう、あのシーンが」的な言い方してて、あー最後だしグロいシーンもそれなりにあるんだろうなこりゃとか思ってたんですよね(原作未読)。んで実際見てみて納得ですね。あーこれはTVじゃムリだなと(エロ的な意味で)。お互い一切触れてない、、、、あれ触れた?? いや触れてないよね??? 触れてないのにあんなエロいシーンってあるんですかね。あ、想像のなかでは触れてたか。まぁでも本番そっちじゃねーしな。本番ってなんだよ、どういう意味だよ。ていうか阿良々木くん、「新学期になったら続きを」って言ったんだからちゃんと続きやれよマジで。ほんとお前、お前さぁ。これの後に『化』に続くの?? ひたぎとクラブっちゃうの?? おま、それどういうことだマジで?? 続きは??? 続きはBlu-ray???

取り乱しました。

突然真面目なことを言うと、阿良々木暦羽川翼は対の存在であると私は思う。そして『傷物語』は、阿良々木暦が2人の「上位の存在」と出会った話であると、私は思う。

阿良々木暦羽川翼は似ていて非なる。いずれも「人を助ける」ということに対して我が身を省みないところがあり、どこか常軌を逸している。しかし『傷』の段階においての阿良々木は、「友だちをつくると人間強度が下がる」という台詞に象徴されるように、友だちを積極的につくろうとしていない。それにも関わらず、偶然出くわしただけの、しかも吸血鬼という人外に対して命を投げ出すのが彼だった。対して羽川は、阿良々木のためであれば命さえ投げる旨を発言するが、同時にそれは「誰にだってすることじゃない。阿良々木くんだからするんだ」ということも口にする。行動は似ていても、その原理は異なる。阿良々木は羽川に対して「お前はなんなんだ」と畏敬の念を抱くが、どちらかと言えばそれは阿良々木に向けられる台詞ではないのか。

そして阿良々木は、吸血鬼という文字通り「人間の上位の存在」と、そして羽川翼という、やはり人間離れした「上位の存在」と出会い、変わっていく。結果を想像せず、ただ目の前にいる者を救ってしまう心理から、自らの行動した結果を引き受ける心理へと。家族や友人の命が失われることを憂い、自らの命を賭して戦いに挑んでいく覚悟へと。有り体な言い方にはなってしまうが、友人ができたことで、彼の「人間強度」は確実に強化され、肉体的にも人間を凌駕した存在へと変貌する。優しくはあるが、無責任な決断をしてしまっていた青年が、後戻りのできない選択を経て『傷』を負い、そして『傷』付けることを知るのがこの物語なのだと思う。

あそこまでしたら付き合えよ!ってのはやっぱり誰もが思うところなんだけど、本編でも確か言及されていたところとは思うが、阿良々木くんにとっての羽川は、やっぱり「対等」ではないんだろう。彼が付き合えるのは、人間同士として向き合えた戦場ヶ原であり、「上位の存在」だった羽川や忍ではないというのは、まぁ頷ける。阿良々木くんと羽川が対等に向き合うのは、『猫物語(白)』でやっと、というところだものなぁ。

改めて3作を見て思うのは、非常に高いクオリティで作られた「シャフトの本気」間違いない映画ではあるのだけど、講談社BOX1冊分を3回に分けて1年もかけて上映したので、やっぱりちょっとダレてしまったかなというのが勿体無い感じがします。もちろん映画だからこそ出せるクオリティ、そして描けたシーンがいくつもあったわけで、映画にしたこと自体間違っているとは思わないんですが。昨年は素晴らしいアニメ映画が多かったこともあり、埋もれてしまった感はちょっと否めないですね。でも羽川ファンとしてはもうこの上なく満足です。しあわせです。はい。

あ、あと蛇足ですけど、3作通じて頻繁に登場した国旗の意味が結局わからぬままでした。キスショット戦で阿良々木くんが走っていく場面で「日本代表!」っていう東京五輪のアナウンスが入ったから、国外からやってきたキスショットに対し、この国の代表として阿良々木くんが戦う的な意味合いがある?? いや、それだとちょっと弱い気が。2020東京五輪をうけているところがあるとは思うんですけど、良い解釈があれば聴きたいところ。