羽川翼、再見

猫物語 (白) (講談社BOX)
西尾 維新
講談社
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この日にこのタイトルで書くと傷物語最速組かと思われかねないが、残念ながら『猫物語(白)』を個人的に今更読んで感想書いているだけの話である。猫物語(白)は一度アニメで見てはいるので、再見。

なんで今更猫物語なんだよというと、そもそもにして自分が羽川翼が好きだからであって、二次元キャラクターに対して萌えたり愛でたり神として敬ったりいろいろなカタチはあれども、純粋に「恋をしている」という表現を出来るのは多分彼女だけだなぁと思うのです。だから必ずや原作もちゃんと読もう読もうと思いつつ、然るべきタイミングを図っていたらこんなタイミングになってしまった。まぁ「傷」の劇場公開があるからちょうどいいっちゃいいか。

羽川に関しては昔このエントリーで言及したことがあったのだけど、焦がれてこじらせた想いというものに自分は弱いらしい。その点において、羽川と同じく堀江由衣が演じた『とらドラ!』のみのりんとの共通性を見出していた。でも今回改めて「猫」を読んでみると、この二人は似ているどころか真逆。「罪悪感はなくなった?」という当時だいーぶ話題になった台詞に象徴されるように、櫛枝実乃梨の恋心が「罪」の意識と表裏一体であったのに対して、羽川のそれは罪というほどに抱え込んだものではなく、ましてきちんと向き合うことすらせず、切り離してきたもの。

西尾維新の生み出すキャラクターは魅力的ではあれど、あまりに極端なキャラ付けをされているので共感して楽しむというものではない。いくらコミュ障であったって、いーちゃんのように周囲を端から「殺す」なんてことはなかろうし、球磨川禊のように「ありとあらゆる勝負に負ける」ことなんてのも我々にはなく、せいぜいがそのネガティブで白々しい「魅力」に惹かれるという程度のものだ。羽川にしたって「極端な優等生キャラクター」であったわけだけど、ではなぜ彼女がそういったキャラクターを背負っていたのかという化けの皮を剥がし、ありふれた女の子へと変えていったのがこの物語だと思う。さながら憑物落としであり、いーちゃんの「戯言」のようでもあり、殺して解して並べて揃えて晒されたのが虎縞頭になった羽川翼だ。

ラストバトルでの、ブラック羽川の「ご主人も泣けたよかったんだよにゃあ」という述懐と、阿良々木くんが到着してからの6回も地の文でその名を繰り返す羽川の胸中がなんとも愛おしく、やっと自分に向き合うことのできた彼女を祝福せずにはいられなくなる。西尾作品特有のゴテゴテのキャラクターを脱ぎ捨てたとして、それでもなお彼女は魅力的なのだと、再確認する。

美しくなくっていい。白くなんてなくっていい。私はあなた達と一緒に、汚れたい

辛いことも苦しいこともいくらでもあるだろうが、罪の意識に苛まれることだってあるのだろうが、それでもそこから逃げずに、ありのままを受け入れて生きていければ。そういう年にできればと思う。