音楽を殺すのは罪か、人か、ビジネスか

このCDのAmazon最低価格が、今20000円を突破している。本来3000円で買えるはずの音楽の価値を、そこまで高めたものは何……?

目の前で酒井法子の曲が200以上も消えていった。クラブ・ミュージックやサイケトランスがドラッグと密接な文脈で語られ、偏見を呼ばないとも限らない。音楽や文化が死に絶えていく様は、見ていて気持ちのいいものではないよね。

取りあえず、今起きていることをざっとまとめ。

クラブミュージックを巡る報道

 昨今例の動画*1をもってクラブとドラッグが結び付けられて報道されていることについて、冗談じゃねえよと脊髄反射して、Twitterにポストせざるを得なかった。


 (中略)


 クラブミュージックはカウンターカルチャーとしてその発展期にドラッグが関わっていて、一つの文化として融合していた事は否定もできない。イギリスやドイツと一緒くたにするなと簡単に言えるような問題ではない。


 覚醒剤や大麻などを否定するのはもちろんだが、その文化を語る側の姿勢、報道する側の姿勢、それらをどう考えるべきか、あれこれと悩んだりもした。

クラブとドラッグの関係、クラブミュージックの文化、報道姿勢、カウンターカルチャー - Aerodynamik - 航空力学

「白いクスリ」削除騒動

「白いうさぎ」という、
酒井法子さんの碧いウサギを替え歌にしたもので、
薬をやるとよくないよという感じの歌を
初音ミクが牢屋の中で歌うという趣旨の動画なわけですが、
クリプトンさんの権利侵害ということで削除されています。

クリプトンさんがミイラになりつつある件 : ひろゆき@オープンSNS

iTunes storeからの酒井法子楽曲削除

 iTunes StoreではずっとVOCALOID関連のiMixを作っていて、知りうる限りのVOCALOID作品を購入し、プレイリストにしています。その中で初音ミクが歌ったものを集めたプレイリストが現在242曲です。


 しかし、酒井法子iTunes Storeでのカタログは268曲。もう少ししたら抜けるんだがなあ、と思っていたのでした。


 初音ミクの楽曲が増えて酒井法子を抜く前に、酒井法子の楽曲がゼロになってしまったのです。

一瞬で消えた263曲:CloseBox and OpenPod:ITmedia オルタナティブ・ブログ


それぞれ問題の主眼となる部分は異なるけど、結局は「犯罪と音楽の関係」を巡る議論になってくる。罪人が作る音楽は汚らわしいのか? そもそもその人の罪って何だ? 起訴猶予になれば安泰なのか? それとも風評被害を恐れたビジネス上の要請か?

なぜ消さねばならないのか。答えは感情論ではなく、ビジネス上の問題かもしれない。あーまたビジネスで文化が潰されるのか。でもやむを得ないか。金がなければ文化は死んでしまうから。

僕たちに出来ることは何か。クラブミュージックは負の側面ばかりではないと、その健全さをアピールすることだろうか。いや、そこに確かに闇は存在していたのだから、それはある意味で嘘になる。そうじゃなくて、例えクスリと結び付こうが、音楽は音楽として単純に素晴らしいんだと訴えたいんだ。音楽に罪はない。いっしょくたにして文化まで排除するなと言いたいんだ。

そのメッセージを正攻法で伝えるのはおそらく難しい。カウンターでいいなら、一つ手がある。「碧いうさぎ」を歌った動画をニコ動に上げることだ。JASRACはニコ動の「歌ってみた」には文句を言えないから、これならiTunes storeのように消されることはなく、酒井法子の音楽が生き続ける。別の理由で削除されるかもしれないが、そのときは多分ネットで多くの味方が生まれる。クスリを使った(かもしれない)人の歌を歌うのは恥ずかしいこと? むしろそれに蓋をしてしまうことの方が恥ずかしいんじゃないの。

でも本当はそんなやり方に頼らず、すべての人に音楽が憎まれない世の中になれればいいんだけどね。教会で歌われてたらミサ曲は健全なのか。NHKで無垢なイメージの高校生たちが歌うから合唱は素晴らしいのか。音楽の価値は、そんなところで決まるものじゃないと信じていたい。