【ネタバレあり】我々はヱヴァQをどのように受け止めればよいのか

エヴァQが公開されて1週間、はてブ経由でいろいろと感想を読んできましたが、「ああ、やっぱりここってはてな村だったんだな」と再認識した次第。感想の類型は大雑把に「よくやった!これでこそエヴァだわ!」という保守的肯定派と、「うん、普通に面白かったよね。新しい物語楽しみだね」という急進的肯定派、「ふざけんな!こんなわけわかんねーもん見せやがって!」という急進的否定派、「ないわー。あれをもっかい繰り返すとかないわー。庵野何考えてんだ…」という保守的否定派の4パターンに分かれると思ってます。んではてな村で読む感想は保守的肯定派が案外多い。エヴァをリアルタイムに見てた、言ってみれば古参のオタクブロガーな方々がみなさん嬉々としていらっしゃいまして、「最近見ないと思ってたけどまだこういう人たちいたのか……」と、なんだか妙な感慨にふけっています。まぁ、これはどう考えても賛否両論になるというか、そういう作り方してますもんね。リアルタイムに見てたうちの会社の方は、よほど酷い目にあったのか「エヴァなんぞ二度と見ない」と言ってましたし。ちなみに僕がエヴァ旧作を見たのは中学の頃なので、リアルタイム世代の方々からすればヒヨッコでしょうね。

んでそういう感想の類を読みながらいろいろ思い返しているのですが、いまだにこの映画をどう受け止めたらいいのか整理がつかず。ええとですね、まず私は「あのエヴァが帰ってきた!」とはあんまり思っていないんですよ。QはEOEとの類似点も多いですけど、この二つは明確に別物だと考えてます。ストーリーはQの方がわかりやすい上に、このあと完結編(と思われるシン)が控えてますので、まだ「全部投げ出した」というわけではないです。ひょっとしたら、この風呂敷をシンで畳み切って、見事な大団円を庵野氏が描いてくれるかもしれないわけで。だからEOEほどには「放り出された」「置いていかれた」っていう感覚は強くないんですよね。

ただ、不親切さでいえば圧倒的にQが上だと思ってます。公開日に上げたエントリーで、僕は「14年の空白を作ることで、無理矢理『破』の展開を破棄しやがった」という話をしたのですが、やっぱりストーリーの連関をほぼ断ち切ってしまったことはあまりに乱暴だったと思うんですよ。EOEはきちんとTV版を受けた完結編でしたし、一応風呂敷を畳む努力が見られました。でもQは、それまでのエヴァを亡き者にした。しかも、あまりに強引な形で。これを「庵野によるエヴァの破壊」として歓迎する意見も目にしましたが、破壊するのであればもっとやり方があっただろうと僕は思います。まぁそんな感じで、QがEOEの再来だとは僕には思えない。

じゃあ嫌いなのかと言えば、そうとも言い切れなくて。いやもう煮えきれなくて大変お恥ずかしいんですが、EOEの面影を残しつつ、明確な変化を遂げてきたこのエヴァを嫌いにはなれないのです。作り方は強引だったかもしれないけど、それでもエヴァがEOEの先へ、シンジのSDATのトラックナンバーを借りれば「第28話」へと到達したことは、やはり評価したくて。

何より、今回はアスカがいます。カヲル君との別れという帰結は旧エヴァと変わらなかったけれど、今回はそこにアスカがいる。彼女は本当に変わったなぁと思うし、Qで一番好きなのは彼女です。『破』で使徒の侵食を受けた彼女が、目覚めた時にはすでにニアサードが起きた後で。その当事者のバカシンジはといえば、綾波を助けて初号機の中に閉じ込められているという。そこから彼女が、空白の14年間をどう生きてきたのかはわかりませんが、きっとずっとシンジへの怒りだとかいろんなものを膨らませていて、そのシンジがトリガーとなって滅びつつある世界の為になんとか頑張って戦って、傍らでそんなアスカのことをニヤニヤ見守るマリとタッグを組んで。「アスカが28歳にしては幼い」という声も聞きましたが、そんな14年の末にあの眼帯アスカが生まれたのかと思うと、僕はわりと納得できてしまいます。ラストシーン、抜け殻のようになったシンジをアスカがずるずると引きずっていきますけど、あれってまさにEOEでのミサトさんの立ち位置じゃないですか。アスカはいつの間にか、そんなところまで来たのだなーと思うんですよ、僕は。

話がいつの間にかアスカづくしになりましたが、そんなわけでまだ、希望はあると思うのです。いろいろ変わってしまったけど、でも、状況は明らかに旧エヴァとは違います。Revival of Evngelionの公開から14年間、ぐるぐると同じところを回って来ていたような我々が、ようやく一歩先へ踏み出せた。Qってそういう映画だったんじゃないかなーと。14年間初号機の中にいて、ぐるぐる周回軌道を回っていたであろうシンジは、やっぱり視聴者自身であると思います。つわけで、さしあたってはもっかい見たいですね。『桜流し』のネタバレ版PV見てたら、もう一度劇場で見たくなりました。いろいろ酷い仕打ちを受けてきたはずなのに、それでも気になって仕方ないんだから、エヴァって嫌なコンテンツですよ。ホント。