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そのねこがうたうとき

物語偏愛者の詭弁と戯言

『心が叫びたがってるんだ』と『とらドラ!』に見る青春の帰結

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ネタバレ感想。

『ここさけ』見た。TLで評判高いのは眺めていたし、ていうかそもそも前売り券買ってたから(上の写真は特典ポスターのもの)見に行かないわけにいかない感じだったのだが、なかなかタイミングがなくて今更な感じになった。なんとかネタバレはほぼほぼ回避できていたのが救い。しかし祝日(11月3日)の日中帯とはいえ、ほぼ満席でやっぱ人気あるんだなと。

まず始めに断っておくと、そこまで心に来たかというと実はそうでもなかったりします。なんでしょうね、ダメージ受けたって点ではやっぱ『あの花』は群を抜いていて(当時録画したのを見るのが待ちきれなくて、最終回の翌朝に見ちゃってから会社行ったんだけど、だいぶ心が深刻なことになって仕事にならなかったの覚えてる)、本作は青春!眩しい!ってのも確かにあるにはあるのだが、どちらかといえばとても完成されたなという印象が強い。スタッフの顔ぶれとしてはそれこそ『とらドラ!』から続いてきたと言っていい青春シリーズになるわけだが、ここにきて完成度としては一定まで高まったかなと。てかもうアバンから丁寧すぎてため息出ましたしね。お弁当の描写とかさ。んでそれ故に、ある意味少しだけ距離を置いて見れるようになってしまった気がする。

とらドラ!』の名前を出してしまったのでそのまま『とらドラ!』話をしますが、宣伝でよく『あの花』とセットにされていたものの、本作は作風としては『とらドラ!』に近い印象を受けた。特に順、拓実、菜月の関係性が大河、竜児、みのりんを思わせた。もともと両想いだった二人と、そこに現れる新たなファクターとしてのヒロインと。そして互いに募る想いはあれど、誰もが素直に想いを口に出せず、一方でわからない相手の想いを勝手に憶測して自分の行動を縛っていってしまう。みのりんが「勝手に」大河を応援しようとしたように、菜月は順を後押し(といっても具体的に何かしたとわけではなく、心中でだが)しようとするわけで。でも結局菜月はみのりんと同じ道を辿らないので、ああこれが本作のテーマである「ほんとうに言いたいこと」が言えた結果なのかなぁと思った。みのりんの報われなかった、結局言えることのなかった想いってのは俺はずっとずっと引きずっていて、なんだか、こういう結末もあったのかなと、ここさけを見て思ってしまった。これ個人的な推測に過ぎないんだけど、たぶん竜児の大河への想いって確固としていたわけではなくて、最終的にそれを固めたのはみのりんだったと思うんだよね。「ジャイアントさらば」だったと思うんだよ。あれね、キツイんだ。いま書きながら思い返すだけでキツイ。ほんとキツイ。みのりん。。。

あーーー話クッソずれたわけだけど、私あの手のヒロイン好きでしてね。。。(まだ続けるか) 同じく堀江由衣が演じている羽川も同じ系統で、菜月もそうなんだよね。自分で思っていることがある、のに、なまじ頭が回って、いい人ぶろうとするから、他の人のこと思いやったような感じになって言えない。そして闇だけをただひたすら抱え込む。結局それが最後まで報われなかったのがみのりんで、きちんと最終的に向き合えたのが『猫物語(白)』の羽川で、なんか、うまくいっちゃったのが菜月、なのかな。まぁ彼女も向き合ったわけ、か。伝えたから彼女の物語は、今一度始まることができたのだ。

んで一方で報われなかった、のが順なのだが、でも彼女の失恋シーンはひょっとしたらアニメでは最も美しい失恋ではないかなと思わせるぐらいの、とても良いシーンでした。雰囲気も、演技も。順はあのシーンだけでもう、ヒロインとして確固たるものがあるなと思った。たとえ結ばれていなくても。

言いたいことを言えない。陰口をたたいてしまったり、抱え込んだり、それで誰かを傷つけることを恐れたり。大樹が「勝手に」部を背負ってギクシャクしてしまったり、さっき書いたように菜月もまた「勝手に」突き進んだり。拓実は「言いたい」という思いすらも失ってしまっていて、その中で順だけが一人、想いを表に出そうと進んでいく。その結果は必ずしも良いものになるとは限らない。でもそれは、誰かが悪いわけではなく、あるいはこのアニメにおいては、決定的に誰かが正しいということもなく。ただ、ぶつかることが確実に世界を少しだけ前に進めて、物語を産んでいく。想いを伝えた、その先の世界を見たい。ああ、いいテーマだなぁと、素直に思える。

私、disってあまり好きではないのですよ。特に陰でdisるとか、あるいはゴシップ的なネタとかね。陰で誰かを笑ったり後ろ指さしたりしたところで、それって別に何も生まない。disを共有できる中だけでの後ろ暗い一体感だとか、まぁそんなものしか生んでくれないのですよね。って、こうやってdisること自体をdisることすらためらわれるぐらいのアレだったりはするのですが、目の前にいるその人に、想いを届ける、良い思いであれ悪い思いであれ、それをきちんと伝えていくことって本当に難しくて、それ自体が青春みたいなものなのだよなと思った。自分は4人の中だとたぶん拓実タイプなのだが、伝えることで誰かが喜んでくれたり、そういうこともあるのかなと、思い直す。

そんなことをうだうだ考えていると、案外このアニメにおける音楽要素って副次的なもの、想いを伝える「きっかけ」に過ぎないなという結論に至る。結局、順は歌に頼らず自分の想いを伝えられてしまうわけだし。んでちょっとさっきの前置きの上でdisるのもよろしくないのだが、合唱をやっている人間としてはステージ上での歌に個人的な想いを載せるってあまり賛同できないのですよねえ。だってそれはお客様に届けるものであって、あなたの私利私欲のためではないでしょ、とつい思う。そのへんが露呈して瓦解しかけたのが、順の失踪理由を「痴情のもつれ」と表現したクラスだったわけで、あの反応は至極最もなものであると思う。ただ、高校生ならば溢れる様々な想いはあって当然、またそれが歌に載ることも決して悪いものではないのだと思うし、そして背景に何があろうと、想いから生まれる歌は確実に人を動かす力を持つ。順は当初思い描いていたように、歌で「言いたいこと」を言うわけではないけれど、でも彼女の歌は違う形で結実していくのですよね。母との関係性だとか、クラスメイトとの関係性だとか。音楽ものとしてはとても良いものを見た思いでした。

つらつらと書いてしまったが、オリジナルアニメーションの映画が不作がち(庵野、宮崎、細田を除く)とされる昨今において、これだけのクオリティの映画にきちんと集客を載せられるノイタミナムービーというブランド、今後も是非活かしてほしいなぁと思った。良いものを見ました。