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そのねこがうたうとき

物語偏愛者の詭弁と戯言

Manners maketh man


「キングスマン」Web限定予告編

昨年公開された『キングスマン』がどーしても見たかったので、やっとの思いでキネカ大森の名画座枠で見てきたのだけど、見てる最中は完全に「んほおおおおおおおおお脳汁めっちゃ出てりゅうううううう!!!!!」って感じであんまり何も考えずともスタイリッシュなアクションと情け容赦ないコメディ要素で爽快な2時間を味わえたのだが、よくよく考えてみると結構練られて作られていた映画だったなと1週間ほど経って思う。

言うまでもないかもしれないけど、イギリス映画ということもあり、脚本的には階級闘争が下地にある。ガラハッドはしょっぱなからアーサーに対して「貴族の時代は終わったんだ(うろ覚え)」とぶちまけ、エグジーをキングスマンへ誘うときには『マイ・フェア・レディ』が引用される。物語のそこらじゅうで"snob"という単語が使われているし、終盤の山場では世界の上流階級(ヴァレンタインのメモを見る限り、Queenも含まれているんだよなぁ……)が「人間花火」で炸裂する。階級なのだ。世界を救うという大それたスパイアクションではあるが、フレッドペリーを着ていたエグジーが三つ揃えのスーツの似合う紳士へと成長を遂げ、アーサーやヴァレンタインへ一矢報いていく戦いが裏にはある。(ところでフレッドペリーは個人的には手が出しにくいちょっとお高めブランドなのだが、フレッド当人がworking classの出であることとか考えると、本国ではそんなお高くとまったブランドではないのだろうなとか思ったり)

ただ日本でこういうのやると単なる下克上だとか「事件は会議室で起きているんじゃない」になりがちで、きっとエグジーも破天荒で無茶苦茶なスパイになっていたんだろうなぁと思うけど、ガラハッドはただただ精神面をエグジーに説いて成長させる。キレッキレのスパイアクションが売りの作品だけど、エグジーがもともと五輪クラスの体操選手だったこともあってか、肉体強化に関してはほとんど言及がなく、冒頭の"Manners maketh man"と、最終試験で試された「犠牲をも払う覚悟」が徹底して重視される(その結果が「人間花火」というのはやりすぎだろ最高だなこの映画)。上に登り詰めたいのであれば、英国においては粗野であり続けることを許さない。紳士であれというのが映画全体を貫く哲学となっていて、だからこそこの映画は筋を通していてカッコイイ。

ところでこの映画、The Secret Serviceというコミックが原作になっているようなんだが、Wikipediaを見るとマーク・ハミルが誘拐されるシーンから始まるっぽい。アーノルド教授役として彼が出ていたのにはそういう経緯もあったんだな。スターウォーズ新作見てないもので、すっかり容貌が変わった彼に最初気付けませんでした。

何はともあれ最高にスカッとする映画で、そして「カッコよさ」を裏付ける設定と哲学があるという点でとても気に入った。次回作が予定されているらしいけど、是非是非ガラハッドは復活させてほしい。安易な復活嫌いだけどこれは許すというか、演出なのか知らないが、やっぱりエグジーより彼の方がアクションのキレが良かったように思う。もう冒頭に教授の爆発シーンで浴びた謎の液体のおかげで不死になりましたとか、そんな感じでいいと思うから(適当)