読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

そのねこがうたうとき

物語偏愛者の詭弁と戯言

『ピーチボーイリバーサイド』にお金が払えるようになった話

まだ電子書籍もpixivも普及する前、Web漫画といえば有志が個人サイトとかで公開しているのが主流だった頃があって、その頃ははてブでも時折「オススメのWeb漫画教えろください」まとめスレがホットになったりしていた。あくまで自分の観測範囲ではあるが、そういったスレで高確率で見かけたのが『胎界主』に『ワンパンマン』、あと今や幻となってしまった『Hybrid Insector』などなど。そんななかで自分が好んでずっと追いかけたのが『ピーチボーイリバーサイド』だった。その作品が商業出版の陽の目を見た。

原作の連載は長く、いまだに完結していないのだが、軽く見積もってもまともに書籍化すれば単行本20巻はくだらないボリューム。筆者のクール教信者がアニメ化作品も複数抱えるほどの大量連載作家になってしまったので、こちらの更新がおろそかになってしまったのが残念なところだけど、作画が別の方へ交代したとはいえ、作品に動きがあること自体めでたい。何より好きな作品にお金を注げるのが嬉しい。

ストーリーとしては、わりとハードにファンタジーをしている。桃太郎が日本の鬼を殲滅した後、さらに鬼を求めて西(といっても西遊記エリアは飛んでヨーロッパなのだが)へ海を渡ったら?というifが下地。鬼を滅ぼすことを目的に旅する東方から来た少年と、彼を追って旅に出る一国の王女を中心に話は進んでいく。そもそも鬼の正体は? 彼らはなぜ人を襲うのか? 「桃」とは何だったのか? 人と鬼、あるいは桃太郎のような異形の存在は共存可能なのか? etcetc。桃太郎の設定を誰も考えなかったぐらいに深掘りし、驚くことに旧約聖書を借りながら独自の展開を繰り広げていく。冒険を続けるごとに世界観は広がり、あらゆるものの「正体」が露見していく様がなかなかに爽快で続きが気になってしまう。

あるいは群像劇として。物語の中で出会ったキャラクターの中に「捨てキャラ」は一切いないのではないかと思えるほど、各キャラの動向がその後も描かれ、再びストーリーの本筋へと合流していく。ONE PIECEの頂上戦争編が大きな人気を得たのは、かつてラスボスであったクロコダイルが戦争の中では掻き乱し役の一人でしかなくなってしまうような、キャラクターの再登場、再配置によって物語世界の構造が見えてくるのが面白かったからのように思う。この漫画においてもそれが似ていて、必ずしも各キャラは初志貫徹するわけではなく、むしろ夢を破られ、過去と決別し、別の道に希望を見出していくような、その結果として物語が進んでいくことが多い。登場時には思いもよらなかったような変貌を遂げるキャラクターもいて、長く追い続けることが喜びになる。

さて、リメイク版。正直なところ先行きは、、、掲載誌が最近休刊の憂き目に遭うことの多いマガジン兄弟誌であるだけに、この長い物語が終わりまで描かれるのかとても不安になる。1巻を読んだ限りでは『ワンパンマン』のような忠実なリメイクではなく、ある程度の改変やエピソード省略を加えるみたいではあるが、とはいえ「早足」になっているわけではないので、贔屓目に見ても6年以上はかかるんじゃないかという具合。まぁ掲載誌の存続を祈り、なんとか最後まで描き切ってほしいものだが。絵柄はクール氏のシンプルでダイナミックな線から、ちょっとリアル寄りでバトル漫画に合った作風になった感じ。今後激しくなっていくバトルや各キャラがどう描かれるか楽しみなところだが、まぁまぁとりあえずはWebで全部読みましょう。余裕で休日1日潰れますから。

しかしワンパンマン(は「元」だが)といいこれといい、新都社も遠くへ来たものだなぁ。