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そのねこがうたうとき

物語偏愛者の詭弁と戯言

『けものフレンズ』と大冒険した話


「ようこそジャパリパークへ(仮歌)」オーイシマサヨシ

乗れるムーブメントには乗っといた方が楽しいというのはこの数年の経験から明らかだったので、「すごーい!」「たのしーい!」というミームが跋扈し始めていたあの時期、すぐにプライムビデオで『けものフレンズ』は最新話まで追いかけた(有料)。1話を初めてみたときは正直しんどくて、なんか楽しい?と思えたのは3話の『こうざん』で強烈なキャラクターのトキとアルパカに出会ってから。その次の『さばくちほー』で世界観が顕になってきてからは、もう迷いなく視聴を続けられるようになって、気付けばはや2ヵ月、今ここに至る。

このアニメが魅力的だったのは、視聴を続ければ続けるほど面白くなっていくということ。何か物語的に大きなターニングポイントがあったり、急激な展開があったりというのは、『さばくちほー』と終盤を除けばほとんどないのだけど、そういう「点」としての面白ポイントが視聴を続けさせてくれるというわけではなく、物語を積み重ねて深みを増していくアニメだったなと思う。弱気なフレンズでも、なんとなく怖いフレンズでも、上手く物事を進められないフレンズでも、必ず何かしら役に立つことができる、そういう信頼感を物語が裏打ちしてくれていた。

一つ一つの要素をきちんと拾っていくところも丁寧で、特に最終回ではそれが爆発するかのような盛り上がりだった。「ジャパリパークでは自分のことは自分で何とかするのが掟」というところから始まり、全員が協力して1つのことを成し遂げるところへと収束する物語であり、それぞれの「得意なところ」を持ち寄っていた物語が、最後には「得意じゃないこと」に果敢に挑んでいく成長へと変化していった。初めて見たときはつらかったはずの第1話も、この地点から振り返ると紙飛行機、カバの台詞、サーバルちゃんとかばんちゃんの最初の掛け合いなどなど、すべてが物語に活きる要素であったことがわかり、鮮やかに生まれ変わる。物語としてはあくまで王道だけど、それを積み上げる過程がこれほどに丁寧だったアニメはなかなかない。

一方で散々議論を呼んだ、伏線らしい伏線だった「謎」の数々に明確な答えが提示されなかったのも面白いところで、この物語は結局のところ「大冒険」であり、そちらは本質ではなかったということなのかもしれない。ゲームとの兼ね合いである程度予想ができるところではあるし、そこは各々補完して想像してみようというところか。「ヒト」を過度に描かないことで、最後までフレンズの目線から見た自然、フレンズが感じるヒトとの差異という点に終止していて、それがまた良いバランスを生んでいた。

ミームから流行った、というかミームがもてはやされたアニメはいくらでもあるけれど、そこからしっかりと作品自体が最後まで評価されるパターンは近年稀な気がして、その意味でも痛快な体験だった。よい大冒険をさせていただきました。