そのねこがうたうとき

物語偏愛者の詭弁と戯言

いま購読している漫画10選(2017年夏版・後編)

前編 の続きです。

映像研には手を出すな!

面白い。前編エントリーで紹介した今井哲也ハックス!』もアマチュアのアニメーション制作モノとして傑作だったけど、こちらはまったく異なるながらも優れた魅力を持った作品。

ハックス!』はアニメーション制作を題材にはしながら、高校生の「部活」における葛藤やらを描くことの方が中心には近かったのだが、『映像研』では高校生という時間、予算、人員のリソースが限られた現場で、如何にアニメを仕上げるのかという現実的な目線がそれに加わる。そしてさらに着目すべきは、そのリアリティとは対極にあるかのような、主人公たちの作り上げる空想世界の迫力。アニメーションとは世界を想像して創造することなのだということをまざまざと見せつけられる。

この想像世界に溢れるフェティシズムがとにかく見もの。主人公たちの描きたい世界は、当然ながらこの作者が描きたいものでもあるんだなと。animation、動きの世界をマンガという静止画で描く矛盾を冒しながら、風や匂いの感じられそうなマンガ内の空想世界が本当に魅力的です。作者自ら許可しているので貼っちゃうけど、この絵を見てわくわくできるなら是非読みましょう。

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やがて君になる

百合マンガ界における近年随一の話題作っぽく見えますが、もともと百合マンガ畑の人間ではないのでわかりません。話題なのは事実と思う。

個人的には特に百合属性を自負してはいないのですが、このマンガはするすると私の懐に入ってくるのです。なんでしょうね。男女でも男男でも女女でも、単にラブラブイチャイチャしているラブコメってあんまり興味なくてですね。あるいは好きだけど伝えようか伝えないかみたいな古典的な葛藤にもそれほど興味はない。どちらかと言えばシンプルな好意の発散と、「好意未満」に対する戸惑いが好物なのかなという気がします。その点だと前編で紹介した『アフターアワーズ』も同じ。あと『未確認で進行形』における小紅のそれとかね。

誰かを好きになることはない、と言いながら、ゆれゆれゆらゆらしている侑の行く末が非常に楽しみです。美しいフレーズでありながら、どこか不穏さを感じさせもする、タイトルの意味も気になるところ。

ガールズ&パンツァー 劇場版Variante

昨年からガルパンにハマってて、コミカライズにも「どんだけ出てんねや(たぶん続刊ものと単刊もの併せて10種類以上出てる)」と思いながらちょいちょい手を出してるんですが、その中でも群を抜くのがこれ。

Twitterでこのコマが出回ってるの見たことないですかね。これに惹かれて掲載誌のフラッパー買ってしまって、結果大興奮しながら単行本の発売を待つことになったのですが。今なお大ヒット断続公開中()である劇場版、本編は当然2時間という枠でしかないのですが、その各場面を切り取り、独自の解釈を加えながら増補コミカライズしてるのがこの作品です。なので時に時間軸を巻き戻しさえしながら、同じ時間別々の場所にいた二者それぞれの思いを描いたり、唐突な回想を挟んで「感情」を補足したり、とにかく描写が濃密。おかげでちょっとびっくりしたんだけど、1巻を終えた時点でまだエキシビションが終わってないんですよね。果たして全編描ききるには何巻使うんだろう。構成上ご新規の方にはまったくもって勧められないが、ガルパン好きには例外なく勧められる。

映画だと本の数秒のシーンとか、メインの流れではないのでさらりと見ていたシーンが、ガラッと色を変えて現れるのが白眉。例えば冒頭のエキシビションプラウダが神社の階段を下りるとき、カチューシャが「ミホーシャにできることはカチューシャにだってできるんだから!」と叫ぶのに対し、ノンナが後ろ向きのまま「知っています」とつぶやくシーンがありますが、あのときのノンナがどんな表情をしていて、どんな思いでその台詞を吐いていたのか。それを伝えるために丸々1話を割く、という、映画のコミカライズとしてはなんとも大胆な構成をしています。以前、ガルパンに対しては飢餓感を覚えるという話を描きましたが、それを満たしてくれる作品です。

CITY

CITY(1) (モーニングコミックス)
講談社 (2017-04-21)
売り上げランキング: 335

あらゐけいいちの単行本を買うのは初めてです。彼の作品に触れたのはアニメの『日常』だけでして。まぁウェブでよくコマが「使われる」マンガ家ではあるので、なんとなくマンガでの雰囲気もわかってはいたのだけれども、改めて読むとこれはすげーなと。

『日常』、シンプルな線で描かれた絵によるシュールギャグが、京アニのスキルによりムダにするっする動いてテンポと躍動感がめっちゃ気持ちいいという非常にコアな作品でしたけど、今回初めてあらゐマンガを読んで理解したのは、あの躍動感はアニメならではだったわけではなく、マンガの忠実なる再現だったということ。彼のマンガを読んでいると、あのアニメを見ていたときとまさに同じ感覚で人物が動き、しゃべり、生活を繰り広げる様が目の前に広がる。マンガ的な「動き」の表現とコマ割りがとんでもなく上手い。話術や話の構成、雰囲気で笑わせるギャグマンガはたくさんあるけれど、マンガ的な表現で笑わせるギャグマンガというのは個人的には初めてに近い発見でした。

ファイアパンチ

単行本買ってないんですけど、ジャンプ+で健気に毎週欠かさず読んでる。続きが気になって仕方ないんだが、ある意味「毎週出オチ」という感があって単行本買って何度も読もうという気にならんのですよこれ。面白い、というのとはちょっと違う。驚きたい、というだけでもない。なんだろう、なんなんだこれ。なに?

しかしジャンプ+すごく頑張ってるよねという感じがする。毎月4日に出る、ジャンプコミックス新刊のラインナップに平然とWJ、SQ、+が並ぶようになってきて、多角化が板についたなぁと。『阿波連さん』なんかもたまに読んでるけど好きです。

はい、10冊。『ファイアパンチ』以外は全部女性主人公で、まぁ以前からそうなんだけど趣味偏ってんなぁという感じが。でも男臭いマンガも嫌いじゃないし、むしろ読みたいとは以前から思ってはいて(つか以前のエントリーにも書いてるし)。なんかいいのないッスかねー。『ヴィンラント・サガ』みたいな(好きなんだが既刊多くて買うの躊躇してる)。『ゴールデンカムイ』は合わなかった。ヒロアカは好きだけどちょっと温い。もっと殺伐としてるといい。あとクレバーな戦闘が見たい。富樫とかヒラコーみたいな。理詰めで戦うやつ。作戦がパワーを爆発させる系。こう、設定と伏線と感情が1つにガッとまとまる瞬間が好きなんですよ。ゴンがゲンスルー倒したときみたいな、ああいうカタルシス描ける漫画家ってやっぱなかなかいないッスよ。というわけでオチとしては、やっぱりHUNTER x HUNTERは世界で一番面白いマンガだなと何年経っても自分は思います。