2020年1月 - 映像研には手を出すな! / マイ・ブロークン・ワカコ / 終末の惑星 他

単独エントリーで書きたいと思っている爆弾コンテンツが年始から多くて大変。 Tokyo 7th シスターズ EPISODE 5.0 『Season of Love』だいぶ大変なことになってません??というのは来週完結次第書く予定。テッド・チャン『息吹』は全然まだ途中なんだけど今月中ぐらいには読み切って書いてしまいたい気持ち。あと話題のゲーム『十三機兵防衛圏』を買った。13人の主人公たちのストーリーをどこからでも見ることができて、ストーリーの合間にシュミレーションバトルゲームを選んでプレイすることもできるという極めて自由度の高いゲームで進め方が難しい。でもそれらが徐々に絡み合ってこう、グッとくる瞬間というのがあるらしいので、それを楽しみに右往左往してみたい所存。

あと、『ゆるキャン△』が実写始まって新刊出てショートアニメ始まって物量がすごい。実写は2話ほど見て確かにすごい原作とアニメを大事にしているのが伝わってきた。新刊はイヌコとなでしこの誕生日祝いなシーンがありまして、イヌコが16歳になったということでおめでとうございますなんだけれども、僕はこの1月で32歳になったので、おおおお半分か……イヌコ俺の半分か……ってまぁだいぶなショックを受けるなどしましたが元気です。『へやキャン△』は大の満足です。毎週5分しかなくてももう大の満足です。

しかし本当のところは今すぐ札幌行きてぇ。めっちゃ札幌行って雪ミクにまみれてぇという気持ちと戦っている。残念ながらこの週末は行けないのだよ。コラボキャンペーンの数々は雪まつり後も続いていたりするので、どこかのタイミングでピャッと飛ぶかもしれない。

アニメ『映像研には手を出すな!』


TVアニメ「映像研には手を出すな!」OP動画【1/5(日)24:10~NHK総合テレビにて放送開始】

湯浅政明監督で放送が NHK という正解しかない形で始まったアニメで、おおよそ放送開始前に予想していた通りのものが出来上がってきてくれているので毎週日曜深夜にニコニコしながら見ている。

湯浅監督のアニメーションって絵柄はシンプルなのに、いやシンプルだからこそなのか、人間の「動き」を描くことへの誠実さがずば抜けている。『ピンポン』の躍動感あふれる試合シーンにそれは顕著に現れていた。本作では水崎氏と浅草氏が動きやケレン味にこだわるアニメーターなので、彼女たちが何を描きたかったのか、というのが、湯浅監督のアニメーションだととても説得力を持ってくれる形になる。浅草氏の妄想世界における背景設定の細かさとか、「最強の世界」を如何様にも作り上げられるアニメってすっごい楽しいんだぞ!っていう魅力が画面全体に溢れていて多幸感が強い。これは映画でもよかったのかもしれないとさえ思うときがある。

オープニングがよい。 Twitter をちょっと探ったところ、金森氏は絶対踊ってくれないだろう、金森氏はこれ金もらってるんだろう、金森氏のダンスがツボに入るなどと金森氏に関する感想を散見した。金森氏が踊るという、原作のキャラクターからするとおおよそありえないアニメーションには実際自分も面食らったが、そのダンスのよくわからないがスタイリッシュな感じがする動きとか、終始無表情なあたりなんかは金森氏のイメージそのもので、不思議とツボに入る。僕は原作でも金森氏が好き。ドライで理論家で、ときにズパズパ切りすぎるぐらいに物事切っていくけれどなんか憎めない人間らしさが根底にあるっていうキャラクター造形、すごく絶妙なバランスだと思っている。

平庫ワカ『マイ・ブロークン・ワカコ』

読書体験というよりは「駆け抜ける感情体験の疾走感」とでも言ったほうがいいような1冊。物語と呼ぶほどの粒度には達していなくて、でも読んだときに襲ってくる感情の物量は並の物語以上のものがあって、なんと言えばいいかと考えるとやっぱりこれは「感情体験」だとしか表現できないし、ただの「体験」ではなくて、音速で疾走していく感情体験に他ならなかった。

何を言っているんだという感想でしかないが、なんかそうとしか言えない。買って読んでしまったほうが早い。読む時間がなくても、読み始めれば音速で過ぎ去っていってくれるので大丈夫。年始早々にすごいもんが出てしまった。

大家『終末の惑星』

終末の惑星
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大家
一迅社
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昨年の『このマンガがすごい!2020』には、このブログでも触れた詩野うら『有害無罪玩具』がランクインしていた。『終末の惑星』の刊行はそれより以前、2018年の末頃になる。読んではいないが、昨年は八木ナガハル『無限大の日々』もヒットしていたし、にわかに SF 単刊マンガブームのような何かが来ているような気がしなくもない。ショートショートサイズの SF マンガが、昨今流行る Twitter マンガのスタイルにマッチしているというのもあるのだと思う。

『終末の惑星』。かわいい絵柄だがオチは存外かわいいことにならないことも多くて、そのギャップが好き。『有害無罪玩具』と同じく、古典的な SF を現代的な作風のマンガへ落とし込んでいるような形の作品も多いので、長年の SF ファンなどには物足りない部分もあると思うが、ストーリーテリングが丁寧なのと、絵柄の受け入れやすさですんなりサクサクと読める気持ちのいい1冊だった。こういう作品から SF という世界へ入ってくれる人が多いと嬉しい。

現実が SF のようだなと感じることも多い近年だからこそ、 SF 的想像力が求められている面もあるのだろう。天下の週刊少年ジャンプで人気漫画として SF が存在している時代ですらある。『Dr.STONE』は切り口こそ入りやすいものの、少年漫画らしいグッとくるカタルシスの連続と、先が読めない SF ミステリー要素も深く取り込んでいて最高に好き。ほんと SF マンガが豊作。

Bunkamura ザ・ミュージアム『永遠のソール・ライター』

正直「なんだかおしゃれな写真」ぐらいの認識しかなかったが、見に行ってみると非常に深い作風でずっと唸りながら見ていた。彼はもともと絵画に興味を持っていたのだという。そう言われると、ああ、なるほどと思う。彼の写真は非常に絵画的だと感じる。画面の大部分をシェードのようなもので隠して真っ黒にした写真や、真っ白な雪道の上を赤い傘がポツリと咲いているような写真のコントラスト。ガラス窓に薄く反射した風景と、ガラス窓の向こう側の風景とを重ねて奥行きを作り出すショット。どれもこれも考え抜かれた構図で、どうしたらこんなものが撮れるのかと首をひねる。