始め方がわからないなら、まずは始めてみたらいい

今はブクログ使っているぐらいにそれなりに本は読むのだけれど、高校の頃まではほぼ全くと言っていいほど読書をしていなかった。なんだか面白そうな本がありそうなのはちらちら耳にしていたのだけど、わざわざ時間を取ってまで読書をするのは高校の頃の自分には億劫だったし、なにより「何を読めばいいのか」がさっぱりわからなかった。試しに本屋に行ってみても、それまで読書をしていなかったが故、どんな本が世の中にあって、どんな本が面白いのか、自分に合っているのかとかさっぱりわからなくて、すごすごと家に帰ってくるようなことが長く続いていた。

大学に入ってみて、さすがにそろそろ本を読む習慣ぐらい付けておいた方がいいのかなぁと思い立ち、また本屋へ向かった。やっぱりどんな本を読んだらいいのかはわからなかったので、それまでの人生で読んでいた数少ない作家の別の作品を当初は読むようにしていた。そうして数ヶ月、何度か本屋に足を運ぶうちに、「あ、この人の本ってどこに行っても大々的に宣伝されてるな」とか、「平積みされてる本はオススメっぽい感じなんだな」とか、本を買うときに目をつける場所がわかってきた。人気の作家をしらみ潰しに読む片手間に、今度は文芸雑誌なんぞを立ち読みしたりもしてみた。あるいは家で、2chの読書系の板のまとめを読んで、タイトルから面白そうな本を探したりした。数をこなしていくうちに、自分はSFっぽいのとかミステリー要素のある作品が好きなのだと気付き、最近では伊藤計劃あたりがお気に入りになりつつある。読書を始めてみて5年、ようやく自分の読書スタイルが固まったのかなぁというところ。

新しいことを始めるときって、当たり前だけど「何から始めたらいいのか」がわからない。でもそこで躊躇して、わからないからと始めることを放棄したら何もわからないままになってしまう。何をしたらいいのか、自分には何が肌に合っているのかを知るためには、その分野の「文脈」に精通する必要がある。そして文脈を知るには、まずは飛び込んでみるしかない。わからないなりに手探りで進んでいくうちに、いつの間にか「文脈」は理解できるようになっている。あるカルチャーが人口を広げられるかどうかは、きっと「最初の一歩」の踏み出しやすさにかかっているのだと思う。

インターネットは「最初の一歩」を踏み出しやすくした。Wikipedia2chのまとめスレは、「わからない」という疑問に対する処方箋としては抜群の効果をもたらすものだから、あらゆる分野の「最初の一歩」の代わりを果たしてくれるときがある。でも一方では、そうして簡易的に踏み出した「一歩」を毛嫌いする人たちもいたりして、ニワカを巡る諍いはネット上でまま見られる。

自分があるカルチャーのクラスタに属していて、そのカルチャーが末永く続いてくれることを望むのなら、どこかの誰かの「最初の一歩」を後押ししてあげる必要があるんだろうなぁ、などと考えている。