『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』読了

もともと興味はあったのだけど、少し前にKindleで安くなってたので買って読んでみた。Kindleのセールは「読もうかな」から「読む」へのハードルを恐ろしい勢いで引き下げてくれるもんだよなと感心する。積むのも簡単だしな。

自身もオタク的なパーソナリティを持っている吉田尚記氏によるコミュニケーションノウハウ本。自分も他聞に漏れずコミュニケーションは得意ではないというかできたら避けたいなと思ってしまいがちなので、参考がてら。彼の論を簡単にまとめてしまえばこんな感じなのかと。

  • コミュニケーションは情報伝達より先に、心地よくなることが大事。
  • コミュニケーションを相手との対決、相手より優位に立つためのものと捉えるな。互いに協力して「気まずさ」を解消するゲームである。相手は仲間。
  • 自分の話したいことを話すより聞き上手になって、質問をすることで会話をつないでいくこと。
  • 劣等感を持つことや、自分の弱点を刺されて落ち込むのではなく、あえて愚者に徹することで会話のネタになる。愚者戦略。生まれた感情は無視できる。

まあ、言いたいことは理解できる。自分はこのうちのいくらかは実践してもいる。が、本書の中に書かれている「コミュ障にできないのは、あくまで休み時間などにおける友人や知人との、どうでもいいけれどじつに楽しげな会話である」という話に反して、これらの事柄を当てはめて成り立たせる会話というのはもっと事務的な会話ではないかなぁと。例えば面接において、相手の質問に紋切り型で返すよりは話を盛り上げることに軸を置いていたという著者のエピソードが出てくる。これは自分も就活でそう心がけていた節があって、いわゆる口頭試験をしてしまってもつまらないし、相手に対して怯えても仕方ないので、未来の同僚として一緒に我々はやっていけるだろうか?という確認の場として面接を位置付けて、なるべく砕けた会話を展開するようにしていた。その方が相手も話にノッてくれることが多かったし、実入りのある話も聞けたように思う。逆にそういうスタンスで望んでも一向に面接官vs受験者という立ち位置を崩さず、壁を作ってくる会社に対しては、こちらからお断りをしたりもしていた。そういう人と働いても多分自分はうまいことやってけないし、そもそも社員の素が見えないのに信頼しようがないので。

話が逸れたが、そういう一期一会的な会話であったり、表面的な付き合いであればさっき箇条書きにしたようなことも良いのかもしれない。でももっと深い人間関係を構築したい場面だとか、長期にわたって付き合っていく人に対して、愚者戦略を取ったり、ずっと聞き上手でいることができるかは疑問だ。というか2時間の飲み会ですらもたないような気がする。弱点はツッコミどこであり、味である。まぁ、そう感じられるなら良いのだが、世の中繊細な人というのもいるのだし。技術論の本を読んでこう言ってしまうのも難だが、人との関係性を成り立たせるのに技術だけを用いていて虚しくないかなぁという気もしてくる。

翻って自分がなんでコミュニケーション苦手なんだろうなと考えると、自尊心が高いのだろうというのが一様の結論ではある。相手にどう思われているのか、相手が自分なんかと話して楽しいのか、まぁそういうことを気にしてしまって話せないし、それを不安がるぐらいなら話すの面倒だなとなってしまう(故に相手から話しかけてくれれば全然余裕で話せたりはする)。だが実際のとこ、他人はそこまで自分のことを気にしちゃいないし、嫌な思いをしたところですぐ忘れたりするのだ、きっと。わかってはいるが、やめられない。たぶん訓練でなんとかなるのかもなぁと思うのだけど。とはいえさっき書いたように、事務的な会話ならそれなりに出来ると自負しているし、仲の良い友人がいないわけではないので、そこまで悲観しなくていいんだろうと思っているけど。

なんだか自分の話ばかりになってしまったが、即効的な処方箋としてはだいぶ的を射ている本だと思うし、ちょっとだけコミュニケーションに対する恐怖を和らげてくれることは確かだと思う。

関連:なぜ他人に話しかけられないのか、あるいはコミュ障と非コミュの違いについて - そのねこがうたうとき