いま購読している漫画10選(2017年夏版・前編)

別に意識していたわけじゃないんだけど、なぜか2年おきに夏にやる企画みたいになってしまったエントリーです。

前回から2年の間にだいぶ乱読するようになったというか、おそらくはKindleによって気軽に漫画をポチって読めるようになってしまったことの余波だと思うんですけど、気になる漫画があると取りあえずポチるとか、面白いと思ってるけど全部はまだ買ってなくてハンパなとこまでしか読めてないみたいな漫画もあったりとか、そんな感じでだいぶ読む数がバラバラ増えてます。おかげで最近は「好きな漫画がアニメ化する」という機会にも多く見舞われるようになりまして、結果的にアニメ見る本数も増えてしまって可処分時間がピンチです。来季は少なくて済みそうだけど。

なんだか最近面白いマンガがすさまじい勢いで増えているような気がして、それは単に自分の読む量が増えただけなのか、何かがバブるってるのかなんなのか。だからちょいちょいエントリー起こしたいなと思うマンガにも出会っていたんだけど、なかなか描く暇作れなくてまとめてって感じになりました。んで実際描いてみたら分量も増えたんで、今回2回に分けます。はい、まぁ、いってみましょうか。上から順にお気に入りな感じです。

あげくの果てのカノン

先月1巻を買ってめっちゃ衝撃を受けたマンガ。年に1回訪れるかどうかの、この作者の頭の中すごく心配だし、この企画通して連載させちゃった担当さんの頭の中もめっちゃ心配になるマンガ。ジャンルとしては「不倫SF」を自称していて、その時点で何言ってんだお前って感じなんですが、内容読んでみても何言ってんだお前って感じです。エイリアンとの戦闘状態が続く東京で、その戦闘員である「先輩」に8年越しの片思いをするメンヘラ喪女的な主人公が、ずるりずるりと不倫へと足を踏み入れていく筋書き。

まぁジャンル名だけ聞くと設定の奇抜さで魅せるマンガなのかなと思っちゃいそうですが、エイリアンと戦争中の地球が舞台という設定は確かに奇抜なのに、読んでみると生々しく偏執的な愛を怒涛のように見せてくれる主人公のキャラクターと暴走力に全部持ってかれてしまいます。SF設定というギミックを上手く活かしつつ徹頭徹尾壮絶なラブコメというのがポイント。世界がどうなろうと暴走した愛に適うものはないし、それを上回る「エンターテイメント」もないのかもしれない。主人公の異常な愛情が常軌を逸しているのに、なぜか魅力を感じてしまって、読んでいるこっちがどうかしちゃったのかと思えてくる。超おススメです。

アフターアワーズ

アフターアワーズ(1) (ビッグコミックス)
小学館 (2015-10-07)
売り上げランキング: 5,967

このブログでもすでに触れていますが、この2年で最高のマンガです。本当はこれを一番上に持ってきたかったんだけど、今は『カノン』の衝撃があまりにすごかったのでそちらを先に持ってこざるを得なかった。あれねえ、ほんとすごいんだ。

違う、アフターアワーズの話だ。とりあえず2巻発売決定やったねおめでとう! ほんとマジで一時はどうなるかと思った。昨年「2巻が出せない助けてピンチ!」って騒動があったけど、その後なんとかなったようで何より。このマンガの続きが出ないことは人類にとってあまりに大きな損失なので。好きなものを追いかけることの難しさとすばらしさの両面を伝えてくれるマンガ。夜明けが来るのが待ち遠しくなるマンガ。日本のマンガ史上もっとも美しい朝焼けの一つが描かれているように思う。

ぱらのま

このマンガです。

ツイートされた切り貼りのコマにグッときたら、そのマンガはきちんと購入して応援するのが家訓。

ぱらのま 1 (楽園コミックス)
白泉社 (2017-01-31)
売り上げランキング: 9,337

見ての通り、なのかはわからないが旅マンガなのですけど、ちょっと異色なのは具体的な観光地があるとか、鉄道やグルメと言った趣味が動機として主人公にあるわけでもない。新宿でやってる駅弁祭りで駅弁買ったら、特急乗りながら食べたくなったので急遽富士山まで行っちゃうみたいな、そういうゆるくて衝動的な旅がつらつらと続くダウナー系旅マンガ。まぁ多少鉄分多めかな?

近年テレビでもブラタモリとかモヤさまとか、特にランドマークがあるわけではなくても街のそこここに「見るべきもの」が溢れている、そんなテーマの番組が増えた気がするけど、それをマンガにしたような感じ。個人的にも普段降りない駅をふらっと降りてみたり(「たまプラーザ」という地名の響きが気になって、特に目的なく行ってみたりとかします)、一駅余計に歩いてみたりして街を眺めるのが好きなので、そういう気分に浸ることができてよかった。大阪名古屋方面からの帰りの新幹線、途中下車のちょい寄り旅がしてみたい、そうわかるその感覚。きっと一歩踏み出さなかったら一生降りないんだろうなーという駅々を見るあの虚しさというか。何があるってわけじゃなくても、土地には歴史があって生活があって、それだけで情報としては十分だったりはしますよね。羨ましいくらい衝動に任せて全国ふらふらしてます、このマンガ。

アリスと蔵六

アリスと蔵六(1) (RYU COMICS)
徳間書店リュウ・コミックス) (2014-04-11)
売り上げランキング: 53

TVアニメ絶賛放送中ですのでぜひ。いやー、いい。いいですよこれも。原作もいいんですよ。何気にもう8巻まで出ていて気軽に追いつけなかったりもするかもしれませんが、であれば同じ作者の『ぼくらのよあけ』全2巻を勧めます。これが好きであれば、きっと『アリスと蔵六』も好きになれるはず。

先日のKindle大規模セールで同作者のデビュー作である『ハックス!』も一気読みしたのですが、結果として今井哲也作品全般がすばらしいのだなと認識できました。いずれの作品からも感じられる哲学として、子どもが徐々に自らの「世界」を広げていき、その中で多くの困難や葛藤にぶつかっていくのだけれど、必ずそれを後押ししてくれる大人がそばにいてくれるというものがある。やり場のない理不尽もあれば、相容れない人と出会うことだってあるのだけど、でもそれでも世界は美しくて、生きていく価値があるものなんだってことを、優しくさりげなく諭してくれる、そんな世界観がたまらなく好きなんですよ。一時期「ポストよつばと!」議論などが見られたこともありましたが、個人的に今井哲也作品はそこに推せます。あんな日常系ではないんだけど。

なお、個人的には『アリスと蔵六』の一条さんがめっちゃ好みです。黒のパンツスーツに髪型はショートで普段はちょっとドライな感じなのに、ガチガチのバトル系能力で本気を出すとメイド姿になるっていう設定がもう完全にツボ。メガネかけてないキャラでこんなにハマるのすっごい久しぶり()。

メイドインアビス

7月からアニメ放送開始ですね。以前から気にはなっていて、アニメ化の報を聞いて1巻を購入。そこからはページをめくる手が止まらなくなり、気付けば最新刊まで読み切ってました。世界最後の秘境である大穴「アビス」を舞台にした少女とロボットの冒険ものだけど、まぁ評判高いとは思いますが可愛い絵柄に似合わずエグい。。

ただ、なんでしょうね。エグくしときゃ売れるでしょとか、そういうあざとい理由からのエグさではなくて、ぬるくない本気の「秘境の冒険」を描いたらこうなるはずだよねという作風。世界も、先を行く冒険者たちも、当たり前ながら子どもだからという理由で容赦をするはずはなくて、ご都合主義のかけらもなく牙をむいてきます。でも主人公たちも子どもだからと何も出来ずに終わるわけではなくて、必死に清濁併せ呑みながら食らいついていくんです。その様がなんとも壮絶。

設定にせよ絵にせよなんとも細かなところまで丁寧に作られた架空世界に目を見張る一方で、特に最新刊で繰り広げられていたバトルシーンの躍動感溢れる作画も白眉。青年漫画と少年漫画の中間に当たるような絶妙な作風です。絵柄で侮るなかれ。