4U 1st Live『The Pres"id"ent 4U』 - アイドルゲームにおける「自由」


【Tokyo 7th シスターズ】KARAKURI / 4U New EP「Winning Day / Lucky☆Lucky」Trailer


【Tokyo 7th シスターズ】4U 1st Mini Album『The Present "4U"』 Trailer

彼女たちは主役ではない。4Uはアイドルゲーム『Tokyo 7th シスターズ』に登場する、主人公たちアイドルの「ライバル」として位置付けられた、ガールズロックバンドだ。アイドルでさえない彼女たちが、ゲームのメインテーマであるはずの「アイドル」を差し置いて単独ライブを開く。その時点で興味深い。

そういう「アイドルとの差異」を意識したのかどうなのか、4Uのライブは本家ナナシスのそれとは全然違うものとして仕上がっていた。一言で言えば自由。そしてむっちゃ楽しかった。

他のアイドルゲームもだいたいは同じだろうと思うけど、アイドルは主人公である我々(ナナシスの用語で言えば「支配人」)によってプロデュースされている、とされる存在だ。だからナナシスのライブでは、舞台上のアイドルは「支配人」に対して歌い踊り、振る舞う、話しかけているという関係性をある程度持っている。彼女たちのステージはきちっと制御されていて、アイドルは求められた偶像を演じきり、MCの中で「支配人」への感謝を述べたりする。そして「支配人」である俺たちは、成長した彼女たちの姿に感極まったりするわけで。それはある意味では、アイドルが演じる一方向な舞台でもある。

対する4Uは、ゲーム内で自パーティに組み込むことはできるけど、ストーリー上はプロデュースされている存在ではない。今回のライブもそれを反映してか、背後に誰かの影を感じるものではなかった。バンドらしく、あるいはロックらしく、自分たちが楽しむ、楽しませる、やりたいことをやる。自分たちでステージを作り上げ、客を煽り、客の反応を欲する、そういう双方向に対話するステージに仕上がっていた。

キャラクターのライブである、という前提は通しながらも、MCになれば「中の人」として話す、演じることも多々あった。披露された映像企画(インターネットラジオを模した自主制作映像)では自ら「4U」ではなくて、中の人の名前を由来に「3Mラジオ」と名乗っていたあたりもそういう意図だったのだと思う。MCはどこまで台本で、どこからアドリブなのかもよくわからないような、言ってしまえばだいぶ奔放なトークばかり。極めつけはアンコールで、暗転した舞台が再度ライトアップしたと思ったら、ゲーム内別ユニットであるKARAKURIの曲『BAAB』に合わせて謎ダンスを踊りながら出て来て、合間にコントを挟んでウケを取りにくる自由さ。『BAAB』はかなりシリアスでダンサブルな曲だったはずなんだけど、二度と真顔で聴けなくい曲になってしまった。

ただ、曲を披露するにあたってはやっぱりちゃんとキャラクターなんだよな、とも思う。自分が4Uを好きになったのは、実はゲームの中ではなくライブで初めて目にしたときなんだけど、彼女たちは声優個人としての力量もありながら、キャラクターとしても見事な姿を見せてくれる。おっとりした佐伯ヒナを演じる長縄まりあは、今回のライブでも「佐伯ヒナを演じる佐伯ヒナさん」と呼ばれていたほどにキャラのイメージそのまま。負けず嫌いだが少し抜けている、「天才美少女」を自称するボーカル九条ウメは、山下まみが自信たっぷりの笑顔を浮かべてカッコよく演じきる。それとは対象的に、クールで毒舌なベーシストである吉岡茉祐 as 鰐淵エモコは、ニコリともせずヘドバンも交えて激しいプレイを見せる(だからこそ、たまに覗かせる笑顔がたまらん)。キャラクターとしての3人のバランスがいいのか、中の人3人のバランスがいいのか。きっと両方なのだろうと思うけど、本当に彼女たち自身が楽しんで、互いをきちんとリスペクトしていて、それが歌を通じてこちらにも伝わる、ソウルフルなステージを見せてくれる。だから自分は4Uを好きになったし、この日もそれは裏切られなかった。

どころか、歌もMCもパフォーマンスも、どれも「キャラクターライブ」の枠を越えてレベルの高いもので、ただただ純粋に楽しかった。NEWアルバムで追加された、ウメ以外がメインボーカルを務める「持ち曲」となった2曲は嬉しいものだし、やるだろうなとは思っていたけど、サンボンリボンの『セカイのヒミツ』やWITCH NUMBER 4『SAKURA』のカバーは、4Uの曲とは異なる雰囲気からの選曲で驚きもあった。自分が一番好きな『Lucky☆Lucky』が、その場で決まったアンコール曲含め、2回も披露されたのは完全に俺得だった。終わってみればもう、楽しい以外の感想がないし、周りから聞こえてくる声もそうだった。

4Uを演じるキャスト自身、ライブパンフレットやMCの中で「まさか単独ライブをやれるとは思わなかった。しかも東京と大阪の2DAYS」と発言していて、それはこっちとしても同じ思いだった。そもそもライブの告知があった昨年4月時点で、彼女たちの持ち曲は4曲しかなかったのに、その後新曲のみ6曲を詰め込んだミニアルバムの発売であっさりと曲数は確保されてしまった。今やナナシスで最も曲数が多いユニットも、唯一単独ライブを開いたユニットも4Uだ。これ、ファンとしては嬉しいけど、ナナシスの展開的に本当に大丈夫か???と思ってしまうぐらいなんだけど、4Uはそもそも主人公たちより先に人気が出ていた設定だし、まぁ現実が追いついたのかもしれない。

プロデュースされた存在としてのアイドルと、対を成す存在として、彼女たちはやっぱりナナシスにおける絶対のライバル役だ。それが設定上だけではなく、こうしてライブパフォーマンスとしても現前するというのは本当に面白い経験だった。この自由なパフォーマンスで、2nd Liveだけとは言わず、もっともっとライブをやってほしい。MCで「全国を回りたい」と山下まみが言っていたけど、本当にライブハウスのような小規模のパフォーマンスで良い(むしろそれが4Uには似合っている)から、細く長く、何より自由に続けてほしい。

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