wowaka - 笑って泣いて踊っていいよ踊っていいよ

wowaka 『アンノウン・マザーグース』feat. 初音ミク / wowaka - Unknown Mother-Goose (Official Video) ft. Hatsune Miku

言葉もありません。ボカロPってなんだか、メジャーシーンのアーティストに比べて勝手に身近に感じてしまうことがあって、こんなに堪える訃報もなかなか無いというぐらいに堪えている。こういうときには、遺された曲を聴くことが追悼になるのでしょうが、今聴くと泣きそうで聴けないので誰か聴いてくれという無責任なことを言いたい。

ヒトリエのツアー行きたくて Todoist にメモしてあったんだけど、これ永久に消せなくなってしまった。 pic.twitter.com/jHsyMEaq0Q
— chroju (@chroju) 2019年4月8日

昨年1度だけヒトリエのライブに行って、本当に楽しくて、今年のツアーも行こうかと考えていたんだけど、それが叶うことはなくなってしまった。 wowaka に関してボカロP時代しか知らない人も多いと思うけれど、彼の肉声による歌は、ヒトリエというバンドのパフォーマンスは本当に唯一無二で。彼のボカロ曲、歌えないでしょって誰もが思う楽曲を、 wowaka 自身が見事に歌いこなしていて、ヒトリエは彼のボカロ時代がそのまま続いているかのようで、そして楽器のパフォーマンスもどれもレベル高くて噛み合っていて、形容するとすればカッコいいという言葉が似合う、なんかまぁ、そういうすごいバンドだったんですけど、その音源が残っていると言うのはとても喜ばしいことだと思うので、みんな聴きましょう。新木場の熱が伝わってくるようなライブ音源です。彼らの曲には「踊る」という言葉がよく出てくるけど、これほど踊らせてくれるロックバンドも他にないです。

高速ボカロックの源流をつくった1人だったろうことは間違いないし、そういう客観的評価はいくらでも出来ると思うんだけど、何より重要なのは、俺にとって最高のバンドの1つだったということで、もちろん「ヒトリエ」が今後も続いていく可能性はあるとは思うけれど、 wowaka が核となって楽曲制作を続けてきていた以上、彼のサウンドが喪われてしまうことは確定的で、そのことがただただ悲しい。せめて、安らかに眠っていてほしい。

初音ミクは、周りで誰がいなくなろうとも、誰かが明示的に殺さない限り今後も生き続け、何食わぬ顔でこれからも数多の楽曲を歌い続けていくのだろう。それを聴き続けていられることは救いかもしれないし、呪いかもしれない。わかんないけど、彼女と、彼女を取り巻く音楽の界隈にいられて自分は幸福だと感じている。自分が死すことがあっても、彼女には生き続けてほしい。音楽は、永久に奏でられていてほしい。『アンノウン・マザーグース』がここ最近のライブで、その一片になりつつあることは、とてもうれしく感じていた。彼が多くの素晴らしい楽曲を残したことはまぎれもない。そのことに本当にありがとうと言いたい。

wowaka さんはなんというか、なんだろう、ロックミュージシャンって斜めに世界を見ていることも多いんだけど、そうじゃなくて世界というものを、舞台の上に立つということを、そこから見渡せる客席の煌めきや躍動を、そういう生きていることを、人間の在り方を愛でていた、生を謳歌して踊り狂おうということをずっとずっと歌っていた人という印象があって、だから早逝というのが似合わない人なのだが、似合わないと言ったところで逝ってしまったものはしょうがない。『トーキーダンス』や『アンノウン・マザーグース』あたりの歌詞が、そういう wowaka の良さがすごく出ていたように思う。

1つの界隈に長く入れ込んでいると、こういう機会は増えるのだな、と思う。 VOCALOID に関わった人たちとして、思い浮かぶだけでも imoutoid 、椎名もた、 samfree に続き4回目で、こんなのはもう勘弁願いたいが、願おうとも人は逝くし、自分がいつどうなるかもわからないだろうとも思う。期せずして wowakaさんとは同い年で、あまり他人事とも思えない。 samfreeさんの逝去も同じ歳だったとか聞くが俺は生きるぞ。みんなも生きよう。彼がなんで死んだのかはわからないし、不摂生だったのかどうかもわからない、仮に健康に生きていても人は突然死ぬというのは、この歳になるともうわかってもいる。ただ、生きられる限り生きよう。生きるための努力をしよう。笑って泣いて、踊り続けよう。踊り続けよう。忘れることなどできないから。