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物語偏愛者の詭弁と戯言

『ギャラクシーエンジェル』 - ニチアサにブロッコリーアニメを見て育った世代の話

Image from Gyazo

ギャラクシーエンジェル*1の各種動画配信サービスでの見放題配信が今月いっぱいで終わるということで、つらつらこちらのツイート(スレッド)を参考に、いくつかの回を見ていたのだけど、これが日曜日の朝9時半からやっていた世界ってどんな世界だったんだよ、って改めて思う。

どんな、って、自分もそれを見ていたのだから「どんな」も何もないのだけど。しかし2020年現在、日曜朝9時半は何の時間かって言ったら『ONE PIECE』にスーパー戦隊なわけで、そんなドメジャー作品が担うような時間帯、20年前で時代が違うだとか、テレ東だからとか差し引いても本当によくやっていたよなと。オタク的文化に対しては、当時より今のほうがおおらかというか、一般化しているはずだが、それでも今『ギャラクシーエンジェル』のアニメやります、って言ったらどう足掻いても深夜だろう。日曜朝9時半から流します、って言ったら正気を疑われる。

しかして自分は、そんな正気を疑われる時代に多感な中学生の時期を生きてしまったわけである。日曜の朝にテレビを点けると健全に無難な『ONE PIECE』ではなく、グッズを買おうと思ったら GAMERS に通う羽目になる『ギャラクシーエンジェル(第3期)』を見て少年は大人になったのである。これが考えられうる限り、自分にとって初めての「オタク的コンテンツ」経験だ。おそらくそういう人は同世代、それなりに多いんじゃないだろうか。今はオタク的コンテンツなんて本当にそこら中あふれていて、小中高生は特にオタクじゃなくてもラノベやアニメを通っているんだろうと認識しているが、当時はオタクかオタクかないかはすっぱり分かれていた。分かれているが故に、オタクの側にうっかり落ちてしまう、というか落とそうとする「トラップ」が、結構簡単に手の届くところに配置されていたような、今思えばそんな時代だったような気がしている。だからなんとなくオタクになった、という人もいるだろうが、この作品が自分を「こちら」へ引き込んだのだ、という、メルクマールのようなコンテンツを持っている人もいるんじゃないだろうか。

トラップ。例えば NHK が優等生面しながら、オタク育成チャンネルとしてだいぶ優秀であるということはよく知られている。僕らの時代で言えば『カードキャプターさくら』は言わずもがな、『飛べ!イサミ』なんかも、わりと濃かった類のアニメだろう。あと、自分の経験を照らすと小学館学年誌*2は、下品なコロコロコミックに比べて品行方正のような顔をしているが、やっぱり中身はちょっとマニアックだった、気がしている。『ポケットモンスター スペシャル』にはゲームにはないオリジナルキャラのイエローが登場するのだが、彼女が金髪のポニーテールを大きな麦わら帽子に隠して男の子のふりをした「ボクっ娘」キャラという設定で、彼女がなければ「ボクっ娘」「ポニーテール」、いずれの属性にも目覚めることはなかったろう。あるいは、やぶうち優少女少年』。こちらも「少年が少女アイドルとしてデビューする」という基本設定を変えず、登場人物を入れ替えて毎年連載されていたという作品で、多くの男子の性癖をねじ曲げたことは想像に難くない(要出典)。それだけではなく、テレ東は今以上に夕方、多種多様なアニメをやっていた。『魔探偵ロキ RAGNAROK』『D・N・ANGEL』『スパイラル 〜推理の絆〜』など、ガンガン系や角川を原作としたアニメが、あの頃は平日夕方にバシバシと流れていた。まぁ書いていてなんだが、別にこれら全部通らなきゃいいだけの話であって、これら全部通っちゃった僕のような人間はもともと素養があったという、ただそれだけの話なんだろう。知っていた。知ってはいたけどさ。

とはいえ、これらを通りながらもそのままオタク街道驀進というわけでは全然なかった。通っていたけど、通っていたことは、やっぱりひた隠しにしていた。というのも、当時仲良くしていた友達に、ドストレートなオタクがいたのが原因かもしれない。友達がオタクだったなら巻き込まれそうだと思われるかもしれないし、実際巻き込まれて、僕の初めての東京デビューは池袋のアニメイトになったりした*3のだが、だからと言って自分はオタクであるとは思っていなかったし、本当にオタクでもなかった。その友達がわりと露悪的というか、あえてブヒブヒ萌え萌え言って周囲から「きもーい」って言われて気を引くようなタイプだったので(悪いやつではない)、「あ、こうはならんとこ」というブレーキが自分の中で働き、萌え萌えするのはキモいごとなのだと学習してしまったのだと思う。それに当時はお小遣い制ではなく、祖父母からのお年玉だけで1年間を過ごす極貧生活を送っていたので、オタク的な買い物などしている余裕もなかった。まぁインターネットは使っていたのだが……二次絵1枚ダウンロードするにも10分以上かかる時代だし、それほど何かが捗った覚えはない。ということで、結局中学時代に萌芽を見ながらも、僕のオタク的素養はそこでは育たず、高校でも部活ばかりの生活を送ってしまったので、それが爆発するには、大学まで待つことになったのである。幸なのか不幸なのか。それでもテレビアニメのような無償で摂取できるコンテンツはやっぱり好きだったし、純粋に好きで何年も見ていた『ONE PIECE』は、当時絵を見ただけで作画監督と演出担当を当てられるという、今の自分にはむしろ出来ない芸当をしていたのでやっぱりオタクはオタクだったのは確かだ。ちなみのその友達がよく話していたコンテンツは『サクラ大戦』で、僕もやはり少なからず影響は受けたりしていた。あれもそういえば土6あたりにアニメやってたな。

さて、ギャラクシーエンジェルで書き出しながらギャラクシーエンジェルにほとんど触れずにここまで2500字ほど書いたわけだが、要するところ自分にとってそういう作品なのである、ギャラクシーエンジェルとは。どういう。オタク的コンテンツとのファーストコンタクトだとさっき書いたが、より正確には「萌え」コンテンツとのファーストコンタクトだった。もちろん、当時の自分には CM で流れる「ブロッコリー」という企業がなんなのかもいまいちわかっていなかったし、 GA のゲームがあるのは知っていたが「アニメ原作のゲームなのかな?」程度の認知だったりしたが、それでも絵と雰囲気で「萌え」なのだとはわかっていた。でも「萌え萌えするのはキモいこと」と学習していた自分がなぜ見続けていたのかというと、まぁ純粋に面白かった。なんでこのキャラクター使ってこれなんだというのがさっぱりわからない、今でもわからないが、あまりにレベルの高すぎるシュールギャグと不条理ギャグがめちゃくちゃ好きだった。それでいて本編では一切かわいらしいところなど見せないエンジェル隊が、 ED でだけ可愛いイラストになるというのもツボだった。シュールギャグを見ているという大義名分を得ながら、 ED の1分半だけ、可愛い女の子イラストを見られるというのは、男子中学生にはそこそこありがたかったのである。あと ED と言えば、1人だけオクターブ下げて歌うフォルテさんがすごくカッコよかった。同じブロッコリー枠でも、そういったエクスキューズがなく、要はピュアな萌えアニメに近かった『ぴたテン』はなかなか入り込めなかったので、やっぱりギャグの皮を被った GA はかなり優秀なオタクトラップだった気がしている。『デ・ジ・キャラットにょ』でもギリギリ NG だった。

当時から円盤を買ったりはしていないし、レンタルした記憶もないので、おそらくは約20年ぶりに今回見た。すると知識なく見ていた当時にはわからなかったことがいろいろ見えてもくるもので、びっくりしたのは沢城みゆきミント・ブラマンシュ)と三瓶由布子ココモ・ペイロー)が出演していたこと。え、だってまだ二人とも三十代半ばでしょ?と思ったのだが、高校生の年齢で出ていたらしい。ミントさんマジかよ。あんな色っぽい声の女子高生がいてたまるか。ていうか自分と3つ4つしか変わらんし。三瓶由布子については、その後『交響詩篇エウレカセブン』を経て、今は『デジモンアドベンチャー:』と、なんだか日曜の常連のようになっている。夕方も合わせれば『BORUTO』にも出ているし、本当に日曜の顔という感じだ。あと、もはや死語というか古典になってしまったが おわり の AA 元ネタが『ギャラクシーエンジェル(第3期)』28話というのも今回初めて知った。28話を見ていたら、それが出てきたのでびっくりしたし、これがナウシカパロだというのも当時は理解できていなかった。わりと古今東西、いろんなアニメやマンガや映画のパロディがあるので、今見ると新たな発見が本当に多い。あれでなかなか脚本、演出練られていたんだなって、今更ながらに感心しながら見ている。

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ということで、自分にとって萌え初体験であるところのアニメを、約20年ぶりに見て懐かしかったし、今でも普通に面白かった、という話であった。一応断っておくと、原作にあたるゲームのほうはプレイしたことがないので、ゲームとの乖離がどうとか、烏丸ちとせがどうみたいな話はまったくわからない。ただただ純粋に、単体のアニメ作品としてとんでもない作品がかつて存在しており、しかもそれが日曜朝9時半というとんでもない時間帯に放送していたという事実を、20年越しに噛み締めている、コロナ渦の夏なのである。

ちなみに一番好きなエピソードは何かと言うと、僕が当時見ていたのは3期だけなのでそこからになるが、実のところ『FNAL DISH REBECCA』が挙げたくなる。このギャグアニメが最終回、どんな終わらせ方をしてくるのかと思えばまさかのシリアスで始まり、いや、でも、 GA のことだから最後に何かオチがつくんでしょ?と思えばそれも一切ないという、一周回ってこの話自体が3期全体の盛大なオチ、みたいな構成に、当時とんでもなく衝撃を受けたことを覚えている。好きなキャラクターだとミントさんになるのかなぁ。腹黒い人好きだし、普通に可愛い。去年、現代の技術でスケールフィギュア化されたときには買おうか本気で迷うなどした。

*1:画像はいずれも d アニメストア配信の『ギャラクシーエンジェルA/AA』から。

*2:『小学○年生』と学年ごとの数字を冠して発売されていたが、現在は少子化の煽りを受けて、全学年共通の『小学8年生(「8」はデジタル数字で、好きな数字に塗りつぶせる、というコンセプト)』に統合されている

*3:なお、僕は埼玉県出身である。