the world was not enough

物語偏愛者の詭弁と戯言

Dr.STONE STONE WARS


TVアニメ「Dr.STONE」第2期 "STONE WARS" 本PV 【2021年1月14日(木)TV放送&配信開始!】

まだアニメは終わってはいないが、先週までの放送を見て、これはもうかなり「ちゃんと戦争をしている」マンガだなと。

少年マンガで「戦争」という文字列が出てきたら、創造するのはシンプルな2つの勢力間によるドンパチだろう。同じ掲載誌だと『ONE PIECE』における「頂上戦争」やアラバスタの内戦はそういう類いだった。 Dr.STONE においても、肉体的な圧倒的アドバンテージを持つ「司帝国」に対抗するため、「科学王国」を千空が作り上げたのならば、その行く先は科学と武力のぶつかり合いだと想像する。

ところがこの STONE WARS において千空側が希求することになったのは「無血開城」だった。誰ひとり死人を出さず、さらに武力制圧するのではなく、両陣営にとって切り札となり得る、石化人類を復活させる「奇跡の洞窟」を押さえることで勝利を導こうと計画する。そのために、科学で作り出した兵器、武器を直接的に戦闘に用いるのみならず、見た目のインパクトが強い戦車を先頭に出したり、本来は連発できない大砲があたかも使えるかのように誇示することによって、相手の混乱や戦意喪失を狙うという戦略を練る。ブラフによって手札を多く見せることにより、戦局を優位に進めるという様は、稲垣理一郎の往年のヒット作『アイシールド21』を思わせる。

強力な武器を保有することの目的が、直接的な戦闘よりは牽制にあるというあたりが非常に近現代的な「戦争」を思わせる。東西冷戦以降のバランス・オブ・パワーに近い考え方と言ってもいいかもしれない。血は流れないが積極的に軍事投資は行い、彼我の戦力を拮抗させることで平和を実現するというのは、石器時代に展開する戦争にしてはかなりクレバーだ。加えて千空は情報戦の要素も取り入れた。そもそもの戦争開始前の時点から大樹、杠という2人をスパイとして送り込んでいる上、携帯電話によって敵地近くに潜り込んだ仲間と密にコンタクトを取り、敵内部にまで潜り込むことができていた。勝敗は戦いの前に決しているとはよく言ったものだと思う(まだ決していないが)。千空については科学というよりかなり化学寄りの印象を抱いていたが、心理学も踏まえながら「戦争」を展開する様を見ていると、なるほどサイエンティストなのだなというのがよくわかってきた。

Dr.STONE は小学生に人気が高いのだと聞いたことがある。そのようなアニメにおいて、こういう「戦争」が描かれるというのはとても興味深い。戦うための武器や戦車を作るし、作った戦車に対して素直に「かっけー!」と反応して見せたりもする。ただ、それを使って相手を殺さなくても、和平を実現してみせるというのは、そう簡単に描ける筋だとは思えないし、それでいて原始時代に「文明」を復活させるという物語において、極めて重要なことだとも思う。