図書館などを目当てに日比谷公園へ行くときは、いつも日比谷駅から向かっていたが、今年あまりの暑さに徒歩ルートを短縮したくて、いろいろ調べた結果、霞ヶ関駅で降りて飯野ビルの地下から上がっていくのが早いと知った。今回もそのルートで、霞ヶ関駅から、飯野ビルの地下でコンビニとトイレに立ち寄りつつ野音へ。ヒトリエによる『HITORI-ESCAPE 2024 10-NEN-SAI〜日比谷超絶野音〜』。
開演30分ぐらい前に着いたので、中はすでにすごい人だった。普段はキャパ1000ぐらいのライブハウスだから、今日はその3倍ぐらいで、わかってはいたがすごい人だった。物販、実用性も鑑みてマフラータオルぐらい買いたいと思っていたが、これもまた見たことないぐらい並んでいて、これは開演までにはけないだろうと思い、断念する。
野音は初めてだった。来年から立て替えが始まるそうなので、現・野音はおそらく最初で最後になる。だから全部が物珍しかった。中には公園の東屋を思わせる小さな売店もあり、なんとなくプリングルスとチーザを買う。それだけでいつもと違う感じで楽しかった。席につくと、隣の人は缶ビールをすでに開けているし、その向こうに座っている方は、公園のタリーズに寄ったのか、蓋のついたコーヒーのカップを持っていた。自由だ。フェスほどではないが、野外で開け放たれた場所で、ここにはライブハウスにはない弛緩した空気がある。
そして始まる。事前にウェブサイト上でプレゼントクイズの企画があって、その中に最初と最後の曲を当てる問題が出されていて軽く考えたりしていたが全然違う曲から始まる。SisterJudy。初めてのソレはどうだ シスター 君はいつも何を嗤っている 飲み込まれるよな音を鳴らして 何を 何を唄おっか。
始まって数曲で汗がだらだらになる。日は暮れてきてめちゃくちゃ暑いわけではないが、熱気のせいもあってか、蒸れている。そして激しい曲が序盤から続いて、休ませてくれない。サウナでダンスしているようだった。やっぱりマフラータオルが必要だったよな、と思い、見たところ物販は開いていそうだったので、MCに入ったところでチャンスとばかりに買いに行くが、どうも同じことを考えている人は多いようで数人並ぶ。もうすぐ会計、というところで曲が流れ始め、SLEEP WALK。よりによって!と思う。黙って聴いていることは絶対にできない曲で、つい身体が動く。横にいる人たちもみんなPayPayしたり財布を開けたりしながら身体を揺らし始める一体感。楽しい。マフラータオルを買って、すぐに封を開けて、汗を拭い、曲間だからすぐに席へ戻るのは遠慮して、後ろで好きに動きながら見ている。横でも何人か同じように見ている。もしかしたら、ここで好きにやるのが一番いいんじゃないかと一瞬思った。でもたぶん、ずっとここにいたらスタッフに声を掛けられるんだろうなと思って、曲が終わるなり席へと戻る。
最近あんまりやっていない曲をやる、とのMCから始まったのは『ワンミーツハー』で、ヒトリエとしては定番のナンバーとして記憶していたから、あんまりやってなかったっけ???と戸惑うが、確かにシノダのワンミーツハーを聴いた覚えがほとんどなかった。後に、帰りながら振り返っても、頭の中に流れるのはwowakaの声だった。確かにこの曲、出だしからめちゃくちゃ難しいよなと思うけれど、そんなにブランクがあったとは思えないぐらいにシノダは歌いこなしている。そんな懐かしい曲から、最近の曲まで満遍なく歌われるセトリ。最近は『ジャガーノート』のイントロが一番テンションが上がる。あれが流れるとニヤニヤしてしまって、すぐにシノダに「ねえ なに笑ってんの」ってツッコまれる。
3000人というキャパでヒトリエを聴くことが初めてで、というか、野外フェスの経験はあるが野外の単独ライブは初めてだったから、こんな開放感と一体感は初めて味わうものだった。周りの高層ビルに音が跳ね返ってるんだろう、というような、少し遠くからの反響。曲が終わっても静寂が訪れず、虫の声が聞こえてくる感覚。見上げれば暮れた空にコウモリが飛んでいて、都会にも案外いるもんなんだよなと思う。開演したときはまだ明るかった空はどんどんと暗くなり、演奏中、脇目で月がのぼってきているのが見える。
『アンノウン・マザーグース』を3000人で大合唱して、3000人でクラップして。ほぼ最後列にいたから、会場全体を見渡すことができて、本当に隅々までみんなクラップしているのが見えて、最高だった。むしろ後ろでよかったと思った。今、ここでクラップをするのに、日本の、あるいは国外からも、いろんなところから3000人が集まってきて、この日比谷にいるのだということがたまらなかった。シノダがMCで、ヒトリエはここに来られるバンドだと思っていたと言っていた。昔彼が、ヒトリエは伝説になれると信じていると言っていたのを思い出す。野音に来るのが初めてなだけあって、僕はこの場所の意味を、たぶんそんなにはわかっていない。でも、ただただヒトリエはこのステージに似合うなと思った。月並みにしか言えないが、めちゃくちゃカッコよかった。
アンコールはwowakaの未発表曲『NOTOK』を初披露してからの『ハイゲイン』。セトリクイズは最初も最後も当たらなかったけれど、歌われてみるとこれしかないと思えるような締め方だった。