高輪ゲートウェイ駅直結で出来た商業施設NEWoMan TAKANAWAには、大型書店としてBUNKITSU TOKYOが入ったそうだと知る。ちょうど気になる本が溜まってきたタイミングで、池袋のジュンク堂本店にでも行こうかと思っていた矢先の吉報だった。それならせっかくだしと向かうことにしたが、道すがらのJR駅にはNEWoManの広告がいくつもでかでかと張り出されていて、開店3日目の大型商業施設に行く、というのはなかなかにミーハーな行いだなとふと気付き、少しだけ気恥ずかしくなってくる。
高輪ゲートウェイ駅は、山手線に約半世紀ぶりに出来た新駅で、駅名のインパクトも相まって話題性が高かったが、降りるのは初めてではなく、たまたま駅徒歩数分のホテルに所用で宿泊したことがあった。駅としては5年前に開業しているが、当時はまだ周辺再開発の只中にあたり、駅周辺には建てかけの巨大なビルがあるだけで、あまり栄えているという感じはなく、飲食店も少なくて、わざわざ隣の品川駅まで夕食を食べに行ったりしたのを覚えている。ただ、それ故に駅併設のStarbucksは土日でも空いていて、それから何度か穴場として利用させてもらっていた。今回降り立って、あのときはほとんど人がいなかった駅に大勢の人が降りて行くのを見て、たかが1年半前から知っているというだけなのに先輩風というか、「いやあ、立派になったものだなあ」なんて思ったりする。


BUNKITSU TOKYOはSouthと呼ばれる棟の5階にあった。よくあるような、フロアの一画を占めるテナントとして入っている形ではなく、フロアを回遊する通路沿いのあちこちに分散して本棚が置かれているような形で、このSouth 5階のかなりの面積を書店が占めているような印象だった。開業まもないこともあって人は多いし、こういった構造だと本に用がない人も通路を通って行くわけだから、通路沿いの本棚を見るのには通行人の間を縫わなくてはならないのが正直少し煩わしくもあった。が、どこまでも本棚が続いて途切れないような感覚で、他ではあまりしたことのない体験として面白い。何より、このフロアには子ども向けのプレイルームのような場所が併設されており、家族連れが訪れやすくなっている。閉じたテナントではなく、こういった開かれた本棚として書店が展開されることで、「偶然の出会い」で本と触れ合える環境になっている。少し形は違うが、横浜駅西口の地下街にも点在するように展開された有隣堂があって、それを思い出した。

『ユリイカ 2025年9月号 特集=あらゐけいいち』が積まれていて、どの書店でも品薄だと聞いていたので買うことにした。先月末に出た雑誌なので、この時期に品薄になっているのは理解するところだが、なるほど、BUNKITSU TOKYOはオープン3日目であり、在庫がまだ捌けていないようで運がよかった。近くにあった文芸誌『新潮』も、いくつか気になる対談や作品があったので買うことにする。あとは文喫の他店舗でよく読まれている本が並べられた棚があって、気になっていたポール・オースター『ムーン・パレス』を手に取り、以上計3冊を買う。これ以外にも、あるテーマに沿ってセレクトされたような棚や面陳がいくつかあり、楽しい。
子どもの頃から、商業施設と言えば一番上にレストランがあり、その一つ下のフロアに大型の書店や楽器屋が入っているという印象が強く、それがあたかも当たり前のように思えていた。昨今はそうでもない場合にも出くわすことはあるし、特にファッション性が高いビルだと、書店が入ることは多くないように感じている。ただ最近少し傾向が変わったのか、麻布台ヒルズには京都の大垣書店が入ったし、虎ノ門ヒルズ(どちらもヒルズだ)にはmagmabooksがオープンした。こういった動きが続いて行くと嬉しいが、果たして続くのか、どうなのか。
