RSSフィードを読んでいたら野田彩子『君のクイズ』の第4話が降ってきて、電車の中なのに「おおっ」と声が漏れそうになった。小川哲の同名小説のコミカライズ。ほぼちょうど1年前の4月3日に第1話が公開されて、不定期連載なので第2話は9月、第3話は今年に入って3月とゆっくり公開されてきたが、急に更新のスパンが早くなって心の準備が出来ていなかった。週刊、隔週刊のような早いペースのweb漫画も好きだけれど、思いもよらぬタイミングでふっと現れるてくれる、不定期連載の最新話公開はご褒美感が強い。
『君のクイズ』で秀逸なのは、例のクイズの回答が、多くの人にはほとんど耳馴染みの無い、やや奇妙にすら聴こえる単語だったことだと思う。賞金1000万円を賭けた競技クイズ番組の決勝戦最後の一問、主人公の対戦相手はなぜ問題をまったく聞かずに正当できたのか?という、これはミステリー小説なわけだが、一切問題を聞かずに本庄絆が放った「答え」は、「彦根城」とか「アンシャンレジーム」とか、そういったどこかで聞いた単語ではなく、それがクイズの答えなのかすら知らない人にはわからない、半ば呪文のようにも聴こえることで神秘性を帯びる。彼が「世界を頭の中に保存した男」と呼ばれる記憶力の天才であり、競技クイズのプレイヤーというよりはテレビタレントとしてそれまで歩んできている、という設定も相まって、本庄の不可解さ、得体の知れなさがわずかな冒頭部だけでも際立って、グッと掴んでくる。
「白い光の中にいた」という、小説版と同じ一文で漫画版も始まるのがいい。
最初に読んだのは小説版ではなく、野田彩子が新しい漫画の連載を始めた!と聞いて飛びついて読んだコミカライズのほうだった。休載中の『ダブル』の続きも気になるところだったが、彼女の漫画が別の作品であっても読める(ことにはびっくりしたが)のが嬉しかったし、何よりストーリーが彼女の絵柄ととてもマッチしていて、原作が別にあるというのに始めはしっくりこないぐらいだった。野田彩子のオリジナルです、と言われてもだいぶマッチしている。だからこのままコミカライズに付き合いつつ読み進めようと最初は思っていたが、冒頭の引きがあまりに強くて先が気になり、わりと薄い1冊だったこともあって先に原作を買って、面白くてわりと一気に読み切った。すると今度は、確かに小川哲の小説なんだなとしっくりくるようになって、なんだか不思議な感覚だった。
先に原作を読み切ってしまったが、それでもコミカライズの各話を読むと新鮮に面白く、彼女の描く表情も演出も想像を超えてくる。このコミカライズは本当に相性が抜群だなと思う、ちょっとこじつけめいた理由もあるのだが、『君のクイズ』の主人公は三島 玲央 であり、『ダブル』の主人公のひとり、鴨島友仁を舞台版で演じたのが玉置 玲央 なのだ。……本当にだからどうしたという感じだが、勝手に運命めいたものを感じてしまった。努力型に見える三島玲央や友仁と、彼らの一歩先を行くオーラのある天才、という取り合わせも、どこかこの2作品は似ている気もしている。原作より先にコミカライズを読んでおいてこう言うのも変だが、このコミカライズが野田彩子でよかったなぁ、と心底思っている。2年、3年とかかってもいいので、最後まで読みたい。
ウェブ漫画は手を出しやすくて、つい色々と読んでしまう。特に不定期連載は話の公開で間が空く故、「今これを読み続けています」という感覚がそこまで強くなく、いくらでも追いかけられる気になる。今読んでいる不定期連載だと、浅白優作の『スターウォーク』は続きを本当に楽しみにしている。ミッションを終えて26年ぶりに地球へ帰還してみたら、地球は本来の軌道を外れて移動しており、自転も停止して、当然ながら人類の姿もほぼ見られなくなっていた……という、こちらもミステリー要素のあるSF。こんなにハードなSFを漫画で読める機会はなかなかない気がしている。各話のサブタイトルが、何らかのSF作品のオマージュに見えるのだが、元ネタがどうにもわからない。第1話『星、歩くもの』、第2話『強制スクロールな世界とその敵』あたりは簡単だが、第3話『日の出へのフライト』あたりからもうわからない。第7話『空を奪われた日』なんて、ダイレクトに何かありそうなものだが。
SFで言えば肋骨凹介の『宙に参る』も好きで、ただ、こちらは連載は追わずに単行本で読み続けている。その違いに何か意味があるわけではなく、『スターウォーク』は最初に出逢ったのが連載のほうで、『宙に参る』は単行本だったというだけではあるのだが、特に不定期連載だと単行本の発売が数年スパンになることも多いので、連載ですぐに読みたくなるのはあるかもしれない。
不定期ではなく一応季刊になるが、秋はないので年3回の不定期みたいなものだったのかもしれないが、『楽園』のWeb増刊は、本誌の刊行停止に合わせてこちらも終了となってしまった。先週から、最後の「春のWeb増刊」が公開されている。panpanya、シギサワカヤ、kashimir、幾花にいろ、郷本と、よく読む漫画家が多かっただけに残念だし、連載陣が今後どこへ移籍するのか、先が気になっている。
