
panpanyaの『そぞろ各地探訪』を読み返していたら、北海道チーズ蒸しケーキが無性に食べたくなった。同書にはこのケーキ……なのか菓子パンなのか、これが「北海道」という名前で発売されるに至った謂れのような話が載っているのだが、それをここに書いてしまうのはさすがに忍びないな、と思いながらヤマザキのウェブサイトにでも何か書いてあるかしら、と見てみたら前身であるソフトチーズなるパンが載っていて、確かに子どもの頃はこんな感じだったようなうっすらとした記憶が蘇った。でもあの頃もっとよく食べていたのは、木村屋のプレーンとチョコが3個ずつ入っていて、それぞれに幾何学的な焼き印が捺されているミニむしケーキのほうだった。謎の焼き印がいつも気になっていたが、今更ながらに調べてみると、あれは 源氏香図 というものの「花散里」に当たるらしい。よもや源氏物語に行き着くと思わず、ちょっと驚いた。
話がずれたが、今は北海道チーズ蒸しケーキを食べたいわけだが、これが意外とない。思えばコンビニというのはプライベートブランドのパンばかりを置いていて、パスコやヤマザキのパンをあまり置いていない。プライベートブランドでもチーズ蒸しパン的なものがあればそれでもよかったが、それもない。同じコンビニでも、デイリーヤマザキがあればいいんだけど、残念ながら自宅の近くにはない。最寄りのスーパーであるまいばすけっとなら、さまざまなメーカーのパンを置いてはいるのだが、ここには木村屋のむしケーキしかなかった。これはこれで好きなのだが、今はあの、ヤマザキの、しっとりもったりとした蒸しケーキがどうしても食べたかった。あんなにメジャーなパン(?)なので、すぐ手に入るかと思ったが見込みは甘かったようで、結局片道10分以上を歩く、土日の大型スーパーへの買い出し機会まで待って手に入れた。
どこで知った食べ方だったか、北海道チーズ蒸しケーキを買ってそのまま食べるということはなく、冷凍して食べるのを常としている。カチカチになることはなく、ギュッと詰まったような重みのある食感になって、これが美味い。これは確かに蒸しパンではなく「ケーキ」なのだなと、より実感できるようになる。それでも食べごたえはふわっと軽く、かつては一息に1個まるっと食べていたが、今は栄養成分表示をつい見ずにはいられず、1個300kcalを越えるようなので二度に分けていただいた。ヤマザキと言えば1個で500kcalを越えるローズネットクッキーとか、若い頃にはありがたがってカロリー供給源としていたけれど、今はカロリーの摂り過ぎを避けるのだから、贅沢にも大人になったものだなと思う。そんな浸り方もできるのは、何より30年変わらない味を売ってくれている(実際はマイナーチェンジしてたりもするやもだが)という故であり、やはりありがたいものではある。

panpanyaと言えば、掲載紙である『楽園』がいよいよ刊行停止になってしまった。『楽園』には紙の雑誌と、「Web増刊」と呼ばれる1日1話ずつ公開していくスタイルの無料電子雑誌があり、紙のほうは2月に最終50号が出ていたが、 春のWeb増刊 は5月31日に、最後のpanpanyaによる『「楽園」ご紹介漫画』が公開されて、これで本当に最後になった。
刊行停止のタイミングで「ご紹介」とはこれ如何に、と一瞬思うが、panpanyaは過去にも2回同名のPR漫画を書いていて、その流れと言うことであり、読んでみると『楽園』の最後としてはこれ以上はないような作品になっていた。「恋愛系コミック最先端」を謳いながら、panpanyaを含め、別に恋愛系ではないのではという作品も多く載っている、『ご紹介漫画』内の台詞を借りれば「随分とテナント?ごとに雰囲気が異なりますね」という感じを覚える、若干のカオス感をおぼえる雑誌だったが、それが味だったし唯一無二だったのになぁ、というのはやはり少し惜しく思う。「恋愛系」というフレーズを反映したのか、鉄道と旅行がメインテーマのkashmir『ぱらのま』が書店で少女漫画の棚に置かれていて、そうかこれは少女漫画だったのか、と唸った記憶が懐かしい。
食べ物と違って、こちらは消耗・消費されるようなものではないから、一度刊行されて、特に電子版については配信を続けてさえしてくれれば、刊行が途絶えたとて、また何年後にでも変わらず読める、というのは、これはこれで贅沢なもの、なのかもしれないと、今は思うことにする。