千葉と、ボカロ三昧と、ポップアイコンと。

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2月最初の3連休は所用で千葉にいた。NHK FMで『今日は一日“ボカロ”三昧』をやっている、というのも出先で知り、夕方まで帰る予定がなかったので、普段だと危ないしあまりやらないのだが、やむを得ずワイヤレスイヤホンを取り出して歩きながら『らじる★らじる』で聴き始めた。中断を挟みながらも12時過ぎから21時過ぎまで、朝から晩までボカロを流し続けると言われたら、何が流れるのか気になって聴かざるを得なかった。

このブログには 音楽・VOCALOID というカテゴリが設定してあって、特に初期の頃はVOCALOIDによく言及していた。徐々にその頻度は少なくなっているけれど、別に聴かなくなったというわけではなくて、いや実際全然聴いていない時期というのもあったけれど、最近はそこそこに聴いている。ゆくえわっとGiga平田義久稲葉曇cat nap あたりが特に好きでよく聴いている。今、深夜12時を過ぎてこれを書きつつcat napを流しているが、この時間になんとも良いチル。

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でも別にボカロであることを理由に聴く、ボカロだから取り立てて聴く、ということはそれほどないし、ボカロだから取り上げなければ、みたいな感覚も、もう数年前から薄れているというか、ただただそこに偏在する音楽の一つになっている。昨年、2023年に一番ヒットしたボカロ曲は『強風オールバック』だろうけれど、ボカロを好む好まないに関わらず、ある程度音楽を聴く人であればこの曲を知らない人のほうが少数派じゃないだろうか。まぁ、あれはちょっと極端な例だろうが、そうでなくとももうボカロは特殊でニッチな界隈、という感じではなくなって久しい。直接的にVOCALOIDがボーカルを務めている曲ではなくとも、語弊のある言い方をすれば「ボカロっぽい曲」はチャートに溢れている。

とか言いながらも、わざわざ『ボカロ三昧』を出先でも聴くぐらいには好きというか執着が自分にはあるんだなぁ、とも思う。そういえば、「そういえば」とかしらじらしく書いていくが、AyaseがYOASOBIの楽曲を初音ミクに歌わせた、『MIKUNOYOASOBI』というアルバムが2021年に出ているのだが、これはタワレコで限定枚数しか売られなかったところ、当時結構頑張ってわざわざ買ったりした。

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いや十分ボカロであることが理由の視聴行動してるじゃねーか、って思い出しながら笑いたくなる。そうかもしれない。人生の一時期に特別だった音楽やアーティストはいつまでも特別なんだよな、とは思う。でも実際、普段音楽を聴く上でボカロだから、というのはあんまり考えていないのは確かで、メジャーシーンのアーティストでも高校生でも新曲をYouTubeに上げるという状況のなかで、音楽をYouTubeでよく聴くのであれば、それらは結局フラットになっていくのだ。

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ボカロ三昧はもうアーカイブ配信も終わってしまったけれど、セトリ(?)は有志がKiiteにまとめてくれている。懐かしい曲もあれば最近の曲もあって、原曲だけではなくAdoによる『神っぽいな』のような「歌ってみた」まで流す構成もよかった。ゲストで出ていたsyudouが、「初音ミクが歌いたいままに歌ってほしいので、調整をあまりしない」「こういった初音ミクの扱い方には、その人の恋愛観が出てると思う」というすっ飛んだ話をしていて、その話題が終盤にゲストで出たDECO*27とのトークでも引き継がれたのが面白かったけれど、肝心のDECOさんが何て答えていたのか忘れてしまった。初音ミクを扱ってきた人が、初音ミクをどう捉えているのか、いろんな人の話を聴いてみたい。自分から見ると彼女はもうボーカリストや楽器でありながらにして、ハローキティみたいなポップアイコンになってしまったよなぁ、という思いが強い。年中いろんなものとコラボして、いろんなところで見かけるし。「初音ミクを語る」なんて機会は今日日ほぼなくなった気がするなかで、昨年出た別冊カドカワは楽しかった。

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話を行ったり来たりさせるが、DECO*27と言えば、どこで話していたのだったか、『ヴァンパイア』がかなりヒットして、それまで届いていなかったような層にまで届いた結果、彼ら彼女らが何年も前のDECO*27曲まで掘ってくれている、みたいな話をしていたと記憶していて(うろ覚えだから違うかもしれない)。最近の楽曲を契機に、シーンの始まりにまで遡って聴く、という聴き方が結構当たり前にあるのかな、と言うのが、まあ歳を取ったから思うのかもだが、それはとてもいいな、と。今回の『三昧』にしたって年代を広く取っていたし、最近の曲しか知らない人にとっては聞き覚えのない曲を聴くきっかけになったかもしれない。あるいはプロジェクトセカイがその点で果たしている役割というのも大きいのだろうな、というのはずっと思っている。好きになったアーティストの曲をデビュー当時まで遡って聴く、というのはそりゃ僕もやるけれど、VOCALOID初音ミクというものを軸とすると、膨大な数のアーティストと広いジャンルをゴリゴリと掘り進むというか、ひたすらに泳いでいくような体験になっていくわけで、そういう縦に横にと広く共通項を作って、本来なら繋がらなかったかもしれないところを繋げられる軸というのは、なんかとんでもない強さを持っているなと思う。やっぱりアイコン、象徴なんだろうな、と。