都立中央図書館と、ゴーヤーチャンプルーと、タイムスリップと。

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麻布十番駅を降りると、すぐ近くにオスロコーヒーがある。そこで軽く朝食を摂ってから、少し長めの距離を歩いて、広尾の都立中央図書館へ行く、というのを毎週のような習慣にしていた頃があった。予定のない週末はだいたい広尾にいた。

あの図書館が良いのは、コンピュータ書があることだった。コンピュータ書というカテゴリだと、たいていの図書館ではExcelの使い方のような本しかない。都立中央図書館にあるのはそうではなくて、専門書だった。職業エンジニアが学修するための技術書の類いが、ここであれば2階の奥、壁一面の棚にずらっと並んでいる。おまけに新刊の入荷もそれなりに早いし、若干ニッチな分野でもしっかり置いてくれる。直接的な貸出業務は行っていないから、貸出中で見つからない、なんて機会も少ない。2019年から通信制大学に通っているが、Foursquareの記録を見るとそれ以前、2018年頃から足繁く通っていたのがわかる。何がきっかけだったかは、もうあまり覚えていない。日記をひっくり返してもみたが、2018年7月14日、唐突に都立中央図書館が登場していた。

先日、久しぶりに都立中央図書館を訪れた。4年ぶりだった。だいたい想像はつくだろうがコロナ禍のせいであり、都立中央図書館も2020年は一般の来館受け付けを中止している時期があった。受け付けを再開してからも、しばらくは事前予約制という形で、気軽に立ち寄れる感じではなくなっていた。事前予約制が解け、通常の来館サービスを再開したのが2023年3月、ちょうど1年ぐらい前のことらしい。

図書館、特に都立中央のような大きな図書館を使うのは、だいたいが「あまり土地勘のない分野について学び始めたいとき」で、土地勘がない故に、まずどの本を手に取るべきかというあたりがつかない。だから大量の本を手当たり次第に閲覧できて、その本で引かれた参考文献にもすぐ手が届くような場所が欲しくなる。そういった用途に都立中央図書館は特にうってつけで、今回も久しぶりに「そういう需要」が自分の中に芽生えたので、久しぶりに行こうか、という気になった。

麻布十番駅から図書館へ向かっていたのは本当に初期の一時期で、その後は早起きも面倒になり、普通に最寄り駅の広尾駅から歩くことが多い。広尾駅で降り、途上にあるセブンイレブンで飲み物を買い、図書館に10時から10時半ぐらいの間で入館すると、だいたいは閲覧席を確保できる。閲覧席は昼ぐらいにはわりと埋まってしまう。特に受験前のシーズンになると争奪戦が激しくなり、その頃は来館を控えたりすることもあった。だいたいは13時ぐらいまで集中して頑張る感じ。お腹が空くと最上階の食堂『有栖川食堂』で、図書館にしては意外と高い1000円前後の定食を食べる。良い値段はするが、良い感じの量の定食ではあって、全国ご当地の料理を提供する月替わりのメニューもあり、僕は好きだった。とはいえ、ちょっと財布が厳しい日はうどんをすすっていたが。

ある日は唐揚げ、ある日はショウガ焼き、ある日は沖縄ご当地で、ゴーヤーチャンプルー。

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一度閲覧席を離れると、再度良い席を取れない場合も多く、昼食後はやり残した気になることをパラパラと立ち読み的に調べたり、趣味の本をふらふらと適当に探したりしたのち、最後にカップ自販機で ななやのほうじ茶ラテ を飲んで帰るのがルーチンだった。

4年ぶりの都立中央図書館、このルーチンは見事なぐらい全部こわれた。まずセブンイレブンがない。ないな、4年ぶりだから場所の記憶違いだろうかとも一瞬思ったが、確かにない。そこにはマンションが建っていた。4年もあれば、建物が取り壊されて新たなマンションが建つぐらいの時間はあるのか、それぐらいの時間か、というのはちょっと感慨深いものもあった。午前を終えて、お腹が空いたので意気揚々と上階へ上がるも、有栖川食堂は平日のみの営業に替わっていた。ついでに「ななや」を扱うカップ自販機も撤去されていた。館内、他に飲食物を手に入れる手段はない。仕方がないので、まだ調べたいことがあったが、その日はそのまま図書館を後にした。

まぁ4年。何もかもが変わるぐらいの時間は流れたのだなと思う。コロナ禍の3〜4年間というのは、自分のなかでタイムスリップしたような感覚がある。いつの間にか過ぎていた。堂々巡りのような日々が駆け抜けていった。街に出ぬ間に街が変わってしまった。ちょっと気になったのは、閲覧席に午後になっても空席が目立っていたことで、これがこの日たまたまなのか、もともとこれぐらいで自分の記憶違いなだけなのか、図書館にまだ人が戻っていないのか、どれなのかはわからない。ただ、図書館のある有栖川宮記念公園には人が大勢いた。図書館の前に芝生の広場があって、ちょうどその周りに桜の木がいくらか植えられており、場所柄いつも多国籍な花見風景が繰り広げられていたことを思い出した。それは4年前と変わってはいなかった。蔵書も然る事ながら、この公園があるからこそ、この図書館に来ているところはある。いろいろと変わってしまったところもあるが、また何か調べたくなれば、自分はここを使うだろうな、と思う。

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その後は結局やはりまだ調べたりなくて、日比谷図書文化館をハシゴした。週末だと野音から大音量の音楽が館内にいても漏れ聞こえてくる、あの環境もそれはそれで好きだったりする。