(修正 09-07-12 22:06)
09年7月12日にもう一度観てきたので、その記憶を元に一部加筆しました。修正・追記箇所は赤字で表記。
↓この動画のあとに『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』のネタバレがふんだんに盛り込まれていますので、ネタバレを見たくない場合は動画だけ再生してお戻りになることを推奨します。曲は若干Pの名曲『アイシンクアンシン』です。エヴァとは特に関係ありません。
彼らはバッドフラグを回避しているのではないか
さて、『破』について自分なりに少し考えてみた。今回特に印象的だったのが各キャラクターたちの性格、展開の著しい変化なのだが、これは旧世紀版との「フラグの立て方の違い」から来ているのではないだろうか。TV版を踏襲しつつ、ほぼ「新作」といっていいストーリーとなっている『破』だが、ところどころでTV版と同じ、あるいは似たシーンが挿入されている。そしてその多くでは、キャラクターの台詞や選択に微妙な変化がある。つまり彼らはTV版でバッドフラグ*1を踏んだシーンで、一つずつハッピーエンドにつながるフラグを選び直しながら進んでいるのではないだろうか。
碇シンジ
- 墓参り後、ゲンドウに電話(通じないけど)。
- 苦手であるはずの父に「自分から」接触を試みている。
- 海洋研でお弁当作り。
- 旧世紀版ではアスカだけに作っていたお弁当が、今回レイとミサトにも。
- トウジ、ケンスケと寄り道するシーンの挿入。
- 比較的積極的に他人と接している。
- 第10の使徒(ゼルエル)戦で戦線復帰の大きなきっかけとなった、加持との接触がない。
焼け野原になったジオフロントを見ただけで零号機捕食を目の当たりにし、レイを助けるべく飛び出す。 - レイを助けるという意思で初号機を自ら暴走に導くという、旧世紀版ではあり得ない展開。
前作『序』以上に「いつものシンジじゃない!」という印象。特にラストの展開のシンジは熱すぎるぐらい。どこかで決定的なフラグを踏んだというよりは、ヤシマ作戦以降、一歩一歩着実に成長してあのラストへ辿り着いたんじゃないかと思う。あのシンジに違和感を覚えた人も少なくなかったようだが、僕は(自分でも意外なほど)すんなりと受け入れられた。今作での彼が内に内に、自分に自分にと意識を向けていないからかもしれない。
式波・アスカ・ラングレー
- 加持への憧れを示す描写がまったくない。
- 家族関係改善で、加持相手に背伸びする必要がなくなった?
- 第8の使徒(サハクィエル)戦後、「一人じゃ何も出来なかった……」と落ち込むも、旧世紀版ほどのスランプには陥らず回復。
- 旧世紀版で見られた病的なほどのプライドの高さがない。
- シンジと「一緒に寝る」シーンであからさまにデレている。というか「一人」が嫌で他人を求めている。
- 旧世紀版で「一緒に寝た」のはただの事故ですから(むしろシンジの反発を招く)。
- エレベーターでのレイとの接触シーンで口論→ビンタを止められる→レイの指の傷に気付く→シンジを巡り会話。
- 旧世紀版では口論→ビンタ→捨て台詞を吐いて退散。
- 「おすまし人形」だと思っていたレイにビンタを止められたことで心境に変化?
- 同シーンでレイに「あなたにはエヴァ以外にも居場所がある」と言われる。
- 「私にはエヴァしかない」という旧世紀版アスカの心理と対称的。
- レイの「ありがとう」の留守電に(わずかだが)笑顔を見せる。
- 旧世紀版で終始レイと対立していたのと対称的。
- 3号機起動実験前にミサトに守秘回線を使ってまで電話、心境の変化を語る(と同時に死亡フラグ……)。
- 3号機起動実験中に「そっか、私笑えるんだ」(と同時に死ry)
- なんか、ここでひょっとしたら彼女の物語は早くも一つの終着点に行き着いたんじゃないかと思う。
旧世紀版ではヤンデレよりのツンデレという印象だったが、比較的素直な性格になっていて、病的な側面があまり見られない*2。彼女の描写自体が少なかったので何とも言えないのだが、苗字が「式波」に変わった理由は、旧世紀版のような家庭崩壊がやはり今回は起きていないということを表すのではないだろうか。だとすれば、旧世紀版でのエヴァへのあの異常な執着や、病んだ精神面も無くなって当然だと言える。残念ながら最後は悲劇的な結末を迎えたが、予告を見る限り『Q』に登場しそうなのでそれに期待。
綾波レイ
- 「お食事会」!
- 教室に入ったときの挨拶→みんなびっくり。
- エレベーターでのアスカとのシーンで、アスカのビンタを止める。
- 「おすまし人形」という形容詞に反発して見せた?
- 同シーンでアスカに対して旧世紀版のような説教ではなく、ポジティブな台詞。
- 同シーンでのシンジに対する心情吐露。
- シンジに初めての「ありがとう」を
もらった言った後、アスカに対してももう一度「ありがとう」を使う。 - ゼルエル突撃時に「碇君がもうエヴァに乗らなくて済むように」との台詞追加。
- 「私が死んでも代わりはいるもの」と言いながら、結局死なずに帰ってきた。
今回、一番旧世紀版から変化したキャラクターと思われる*3。明らかに感情の起伏が旧世紀版より激しくなっていて、ひょっとして「リリスの分身」ではないのではないか?と思わされた*4。特にシンジに対する心境の変化が事細かに描写されていて、これがラストへの伏線としても機能している。旧世紀版では使徒の精神汚染を受けるまで自己の感情に気付かなかっただけに、これはかなりの変化*5。
葛城ミサト
- 父の形見である十字のペンダントを度々握り締めて祈るような描写。
- 加持と二人きりで飲むも寄りを戻さない。
- 「大学を出てからいろんなことを学んだ(知った)」
- 「自分のことばっかりに構ってられない」的な台詞→大人になった?
- そもそも飲んだ場所がバーではなく、色気のない座敷の居酒屋。会話も仕事の話に終始。
- ↑のように父のコンプレックス克服とすれば、「父の代わり」としていた加持の存在は不要ともいえる。
とにかく大人になった。今回は出番が少なかったせいもあるだろうが、泣かない、落ち込まない、悩まない。セカンド・インパクトのトラウマを彷彿とさせる描写がほとんどない。唯一それに該当するのは、海洋研見学を断ったことぐらいか。パイロットたちの変化が激しすぎてあまり言及されていないけど、彼女もかなりの変貌を遂げたキャラだよなァ。
加持リョウジ
- ミサトと二人きりで飲むも寄りを戻さない。
- 同上。
- エレベーターでのミサトとのキスシーンカット。
- シンジに「葛城を守ってやってくれ」。
- 死亡フラグかと思ったが死ななかった。
- ミサトを守れるのは自分ではないと自覚している?
前作ではうやむやにミサトと寄りを戻した加持だが、今回どうもその気はないらしい。彼の変化ではなく、ミサトの変化が原因だと思う。
碇ゲンドウ
- (旧世紀版にないシーンだが)レイからの「お食事会」の誘いを一旦断ろうとするも、レイにユイの面影を見て承諾。
- 仮に新劇場版がループ世界で、ゲンドウがループを自覚しているとすれば、EOEサード・インパクト時のユイとの会話を思い出した?とも取れる。
- 初号機の本部襲撃後、シンジとの会話で「大人になれ」と諭す台詞。
- TV版19話では「お前には失望した」と突き放す台詞。
この人は相変わらずの無愛想っぷりだが、それとなく息子への気遣いを見せ始めたように思う。恐ろしいほど不器用な形で、だが。これから鍵*6を握りそうな人物。
渚カヲル
- 月から飛来したときに「今度こそ、君だけは幸せにしてみせるよ」
旧世紀版の厭世的で達観した雰囲気とは異なり、(妙な)使命感に満ちた台詞を吐く。旧世紀版は彼が「自ら死を望む」などという超越的な選択を取らなければ、違う展開もありえたんじゃないかなーと思うだけに、この台詞もまた「バッドエンド回避」とも取れると思う。
……と、いう感じ。フラグの立て方の違いというより、各々の性格の違いが出ているシーンという形になってしまったが、それが旧世紀版と同じシーンに現れることによって、さらに違いが引き立っているように思う。フラグの立て方の違いがそのままハッピーエンドにつながる根拠はないのだが、今作での各キャラの変化はどれも前向きなものなのだ。旧世紀版で暗い方へ、誤った方へ、自分の奥底へと進んでしまったものを、改めて明るい方へ、正しい方へ、自分の外側へと進み直している。それが新劇場版における、世界の「リビルド」なのではないだろうか。
実際、見てて面白いぐらい救いがあるなーと思った。ラストのレイなんて、旧世紀版なら戻ってこないんじゃないか? ただ一方で『今日の日は、さようなら』の使い方と言い、嫌な意味で「エヴァ的」だったとも思う。前半がすんごく明るいエヴァで、アスカも病む兆候がなかっただけに、あれは本当に油断した……。思わず一瞬これがエヴァだってことを忘れてたorz たぶんしばらくの間、というか一生あの曲はトラウマかもしれない……。
前作『序』で張られた伏線の回収
ついでに自分メモ的にまとめておく。
- 西暦が登場しない。
- 海が赤いのはEOEのサード・インパクトによるもの?
西暦西暦かは不明だが、何らかの年号はユイの墓に刻まれた生没年で確認(下5桁が「02004」?)。海も元々青かったことが海洋研のシーンで判明。よってこれら2つが「ループ世界説」の根拠から外れたむしろ西暦より遥かに長い年数を蓄えた年号だとすれば、ループ世界説が強まる。
- 未登場の第3の使徒は?
- 冒頭シーンであえなく仮設5号機に倒される。ただ、正体は永久凍土で発見された後、バラバラの状態で封印されていたという以外よくわからない。南極のアダムに対して、舞台が北極基地のベタニアベースだったのが気になる。
- 月にあったリリスのような巨人の正体は?
- Mark.06建造に必要だった使徒、あるいはMark.06の素体か。
- 使徒を倒したときなどに虹。
- 今作でも散見される。
- 予告編で出た「ADAMS?」
- セカンド・インパクトの回想シーンでそれっぽいのが出たが詳細不明。なんで4体もいるのやら。
残った謎への考察
- アスカは……??
L.C.L化、あるいは検体回収?(2回目の鑑賞でアスカの肉体が回収されているのを確認しました) いずれにしろ「死んではいない」っぽい。
- マリは結局何者?
- アバンタイトルで「自分の都合に大人を巻き込むのは気後れする」と言っていたが、何らかの目的はある模様。
- 複数のエヴァを初搭乗で自在に操れたことから、シンクロ率を制御できるカヲルと同じく使徒の可能性。でも流血するなど、使徒とは思えないほど簡単に負傷している。また2号機で敗戦後、「やっぱ匂いが違うから(ダメなの)かなァ……」と漏らしている。
- 裏に何らかのバックアップが存在。携帯を使って英語で会話していたことから他国のNERV、あるいはゼーレ? でもシンジに「NERVの子犬君」と言っているのでNERVの線は薄いか。ゼーレの場合携帯で会話はあり得ない気もする。
- 既存の登場人物の中で、確実に関係を持っている相手は加持のみ。
- カヲル君の目的は?
- 「君を幸せに……(ry
- 予告では頭身が高くなった?大人のカヲルが登場。4人のチルドレン(シンジ、レイ、アスカ、マリ?)が終結したときに後姿を見せている人物も彼?
- 真のエヴァンゲリオンとは。
- 「偽りの神」ではなく、「本物の神」。
- ゼーレが作ろうとしている真のエヴァ=Mark.06でおk?
- ラストの「人ならざるもの」となった初号機も「この世の断りを越えた存在(byリツコ)」、すなわち神?と化している。
- 両者に共通するのは頭上に浮かぶ「天使の輪」。
- 残る非量産型エヴァは。
- ゲンドウ、冬月は4号機までしか建造を知らされていない。5号機以降を計画しているのはゼーレ?
- 8号機は登場確定(パイロット不明)。7号機は……?
- パイロットの数的に8号機までだろって気がする。
- セカンド&サード・インパクトが旧世紀版と異なる?
- 使徒に「タイプ」が存在する?
- ネブカドネザルの鍵?
- 人類補完計画の要となる?
- ロストナンバーがどうのと加持が言っていたが聞き取れず。
- 北極基地(ベタニアベース)の存在。
- 月面基地(タブハベース)の存在。
- 管轄はMark.06の建造。
- NERVでも最高幹部クラスのゲンドウ、冬月に上陸許可が下りない。=ゼーレの管轄?
- カヲル君が『序』の時点からすでに何故か待機。ロンギヌスの槍も安置されていた。
- 「タブハ」もまたキリスト教由来と思われる。
- ゴルゴダベースの存在。
- 居酒屋での加持の台詞でのみ確認。場所は不明。ダミーシステムを開発した?
- 「ゴルゴダ」の由来は「ゴルゴダの丘」だろう。以上より登場済みの3つの基地すべてがキリスト教関係の名を持つ。