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そのねこがうたうとき

物語偏愛者の詭弁と戯言

『STRONG WORLD』感想(2)―レンタルするぐらいなら劇場で

映画『ONE PIECE Film STRONG WORLD』感想第2弾、今回はネタバレありですので、未見でネタバレ回避したい方は今すぐ回れ右されることをオススメします。



……はい。それでは感想本編。僕としては今回の映画、100点満点中70点といったところでしょうか。ええ、微妙です。正直「これはONE PIECE史上最高傑作! 何度も見るべき!」みたいな興奮はありませんでした。今までのワンピ映画で一番興奮したのは「オマツリ男爵」かなー。あれが個人的には86点ぐらいなのですが。決して駄作ではありません。でも、期待していたほどではなかったというのが率直なところです。

間違いなくカッコいい純度100%のONE PIECE

まずカッコ良さに関しては大満足です。どういう映画か?と聞かれれば、とにかくカッコいい映画だと答えます。尾田栄一郎・製作総指揮の力は絶大です。予告編などでもたびたびイメージカットが上がっていた最後の殴り込みのシーンといい、シキたちとの戦闘シーンといい、ちゃんといつもの「カッコいいONE PIECE」を見ることができます。個人的には台詞がすごくツボでした。尾田純正の台詞なだけあり、ルフィらしい台詞、ゾロらしい台詞を聞くことができる。やっぱりアニメスタッフのオリジナルとは一味違いますね。

そして今回はアニメスタッフも頑張ってる。TV版もこれくらいやれよ!ってぐらい頑張ってるw 戦闘シーンではガンガン動くし、作画も原作のタッチそのままで、ほとんど崩れることはなし。クオリティ的にはONE PIECEには珍しく、かなり安心して観られる作品に仕上がっていました。

あと、今回はちゃんと「映画」としてのONE PIECEになっていたなーと。アニメ的な意味で。テレビではなく、映画でしかできないことって絶対にあると思うんですよね。それをしっかりと盛り込んでくれていた。例えば冒頭の海軍本部でのシキのシーン。あれは絶対に映画館で見た方がいい。次のルフィ登場シーンも、構図が工夫されていてよかった。音楽もいい感じで、初っ端からかなりワクワクさせられました。

個人的に懸念していたのがゲスト声優。ここまで気合い入れたのにゲスト声優は入れるのかよ!?と若干残念に思っていたんですが、シキに関しては心配ないです。そこはさすが竹中直人さん、違和感なく演技されていました。あとの2人もまーチョイ役でしか出てこないので、さほど気にはならないと思います。

ストーリーは詰め込みすぎか?

ただ、今ひとつ見終わったあとの達成感というか、満腹感が足りなかったのも事実。ちょっと消化不良を起こした感じです。原因はおそらくストーリーにあります。

要素を詰め込みすぎているんですよね。尾田先生自ら断っていることですが、彼はアニメを作る人ではないので、おそらくいつも漫画の1シリーズを作るのと似たような感覚で作ってしまったのではないかと。最近のONE PIECE原作を見ればわかりますが、大体いつも相当なボリュームになっています。もちろん、あれに比べればかなり要素が削ぎ落とされたストーリーにはなっていますけど、それでも多すぎる。

結果として、ちょっと絶望感が足りなかった。シキに挑む理由は“東の海”壊滅、ナミ救出、あとはあまり膨らみきっていなかったけど、メルヴィユの住民やシャオの祖母の「ダフト」への懸念なんてものもそれに含まれたはず。でも、“東の海”の被害は新聞を通して伝えられただけで、ほとんど何の実感もない。シャオもいまいちストーリーの根幹に絡みきれておらず、彼女がなぜ出てきたのかがちょっと腑に落ちない*1。かろうじてナミ救出、特に中盤のシキに敗北した辺りが一番絶望感を描けてましたが、それでも足りないかなーと。第一、シキがどういう海賊なのか劇中で説明されてませんからね。ロビン辺りから解説があってもいいはずなのに。それを知っているか知っていないかでは、麦わらの一味の心構えも確実に変わってくるはずでした。

あと、「驚き」もなかった。公開前に出された様々な情報をつなげてみましょう。それだけで映画のストーリー、ほぼ出来上がりますからw “東の海”が襲われ、伝説の海賊であるシキが現れ、ナミがさらわれ、一味はバラバラになり、最終的に正装で殴り込み。単純明快なストーリーで楽しみやすいのも確かだけど、どこかでどんでん返しが起きてくれてもよかったかなーと。最初から最後まで引っかかるものがなく、するすると飲み込めてしまったので、「あー面白かったけど、何か足りないなー」という感想に落ち着きました。

“金獅子のシキ”は弱すぎたのか

シキ。「空を飛ぶ」ということが前々から明かされていたわけですが、能力は単純明快に“フワフワの実”ということでしたね。冒頭の能力解説シーンでは「ただ浮かせるだけって強そうじゃねェな……」とか思いましたが、そこはさすが尾田先生。“鹿威し”みたいな使い方をさせるとは恐れ入る。原作でもいつも、こんな能力の応用方法があるのかと驚かされますからね。

ネットで感想などを巡っていると、「ルフィがシキを倒すほど強くなっているのか?」という疑問がちらほら聞かれますが、まあどうなんでしょう。確かに2時間で倒さねばならんという時間的制約もあり、「思ったほど強くなかったな」という感想を抱いたことは事実です。ロジャーと争っていたような海賊にしては呆気なかったかなと。ただ、あの世界における「強さ」というものが、極めて曖昧であることも事実。ルフィは青キジには敗北を喫していますが、同じロギアでもエネルには偶然も相まって勝っている。単純なインフレではなく、能力の「相性」にも左右されるのがONE PIECEのバトルです。なにより、シキはルフィの能力*2を理解しきっていなかった。そこにあの最後の技が来れば、避けられないのも無理はないでしょう。

ただ、惜しいなーという気はします。あれだけの大物、映画一本だけで消してしまってよかったのかなと。個人的には原作再登場を期待したいのですが、今回海軍に捕まったような描写があったので望み薄ですかね。先も書いた通り、彼の素性に関する解説がほとんどなかったんだけど、もっとロジャーや“白ひげ”の話を絡めて盛り上げて欲しかった。

総評

尾田先生のおっしゃってる通り、彼はカッコいい少年マンガは描けるけど、アニメの専門家ではない。もうその言葉そのままの映画だったと思います。確かにカッコいい。爽快感もある。でも、アニメとしてはどこか不完全。そんな作品です。純粋な「完成度」という意味では、元々映画の専門である細田守監督が作った「オマツリ男爵」や、構成としてはシンプルな「デッドエンドの冒険」の方がよくまとまっています。

もっとシンプルでいい。たった2時間の映画なんだから「ココ!」と一点スポットを決めて、それを中心にぐわーっと展開させていればよかった。シャオとか別に要らn……とも思うわけです。“東の海”が危なくって、それを救うためにナミが自らシキの配下に下っていってしまったから助けに行く。それだけでよかったのではないかと。

ただ、これは10周年記念のお祭りですからね。これまでにない強敵を相手に、ルフィたちがカッコよく立ちまわってくれていたので、個人的には満足しています。ミスチルの『fanfare!』も予想以上にマッチしていた。同じ意味でコナンの『漆黒の追跡者』も、部分部分腑に落ちないものの楽しめましたから。ちょっと豪華な、いつもと違うONE PIECE(コナン)が見られるという意味で。千数百円払う価値があると思えない人もいるかもしれませんが、DVDで後から観るぐらいなら、劇場で見た方が十倍楽しめる映画ですよ。

補足:気付いた点いろいろ

  • ロビンたんメガネ×ポニテ×ニットワンピver.は原作でも出すべき。可愛すぎて死ぬ。
  • ナミは別にいいや……。
  • ゾロが悪い顔していると何故かニヤッとできる。アニメ版って不必要なほど嫌らしい顔にしてくれるよね。
  • ワンピ映画恒例のサービスシーンも。一時サンジがやけに色っぽかったのはそっち方面のサービスか。
  • TV版最近見てないので「動くブルック」を初めて見たけど、チョーさんがイイ仕事しすぎ。楽しい。
  • メルヴィユ住民に羽がついていたのはやっぱ気になる。ていうかどう考えても伏線。空島&月絡みの。
  • BGMはサントラ購入を検討したぐらい好き。
  • パンフレット買うべき。ワンピ声優に通じている人なら尚更。800円。
  • 0巻巻末メッセージの「ルフィ17歳最後の冒険」が意味深すぎて眠れない。ただ「第二部」説は否定したい。

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*1:おそらく、シャオの祖母の病気絡みで当初は「感動」ストーリーになっていたのではないかと推測。

*2:雷が無効であること。