the world was not enough

物語偏愛者の詭弁と戯言

篠原健太『彼方のアストラ』 - 追いつくなら今しかないです

『彼方のアストラ』が12月2日公開の第47話を含め、あと3話で終わるらしい。これには参った。終わるのが寂しいとかショックとかではなく、伏線と謎をすべて回収しきって、本当にあと3話で終われるのか?というのが最初に頭をよぎった。ただ不安はない。ここまで読んできた話を振り返れば、最後もきっと綺麗に終わるのだろうと信じるに足るだけの材料はある。

篠原健太と言えば『SKET DANCE』なわけで、自分はそれほどスケット団はちゃんと読んではいなかったのだけど、何というか、軽いノリのマンガに見せかけていて、案外ヒヤリとするような重い設定や、思いもよらぬ何気ない描写を伏線として拾い上げてくる、軽いようでいて重く、重いようでいて軽やかな、稀有な感覚を抱くマンガだなと思っていた。要するに週刊少年ジャンプではよくある「ギャグマンガが徐々にシリアスを混ぜてくる」展開だったのだけど、それが何の脈略もなく挿入される話だったり、無理矢理シリアスへと舵を切ったような印象を抱かせたりするわけではなく、きちんとギャグマンガでの描写や設定を拾い、そこからの延長として話を膨らませていたように思う。そしてシリアスな展開はまた、ギャグの要素として返ってくる。バカなことをして笑い合うのも、悲しいことや重い出来事があるのも、そういうジェットコースターのような日常が高校生の青春なんだなぁと感じられるような、そんなマンガだった。

SKET DANCE』を知っている人に説明するなら、『彼方のアストラ』はあのジェットコースター感を10倍濃密にしたような急加速マンガだ。

話の筋としては、宇宙の彼方で、ある事故により遭難した9人の高校生が、超光速の宇宙船を使って5000光年の距離を帰還していくサバイバルもの。どことなく萩尾望都『11人いる!』を思わせる設定で、9人のうち1人「刺客」が隠れていることが示唆されるなど、実際に同作をオマージュしたのではという要素も随所で見られる。9人それぞれの素性と過去、そして何故彼らは遭難するに至ったのか、刺客とは一体誰なのか、5000光年の距離を無事にサバイバルできるのか。紐解いていかなくてはならないシナリオは幾重にも存在するのだが、それが上手く整合して複雑にはなりすぎず、シリアスとギャグを織り交ぜてテンポよく進んでいく。自分がこの作品を読んだのは3巻分の無料開放のときだったが、手を止めることができず、するすると全部読み切ってしまった。設定としてはSFを思わせるが、抜群にテンポ感のいい、ミステリーと冒険を合わせた作品と考えた方が良いかもしれない。巻数が短いこともあり、描かれた伏線が忘れぬうちに拾われていくという点もポイントが高い。

話が進むに連れて、物語の背景にはかなり大きな風呂敷が広げられていることが判明してくる。それ故に、完結までにはそこそこの話数に達するのだろうと予想していたのだが、まさかの全49話での年内完結宣言。しかしまぁ、ここまでパズルのピースを丁寧に1つずつはめるように重ねられた物語なので、決して消化不良な終わり方はしないのだろうし、むしろダラダラとした終章になることなく、スパッと終われる話数なので期待が持てる。これ、本当に追いつくなら今だと思う。48話までを読んで、貯めに貯めた期待感を49話の公開日に一気に開放できる、そんな快感を味わえる日が来るというのは、想像しただけでワクワクする。もちろん、完結5巻が出てから一気に全巻読んでみるのも良いと思うが、今なら乗れるぜ、このビッグウェーブに、とも本気で思う。

『彼方のアストラ』は4巻まで発売中、そこから第45話まではジャンプ+のアプリで課金が必要で、冒頭3話と最新の2話分が常に無料公開されている。まぁ正直ジャンプ+上での課金はちょっとお金がかさむところではあるが、今追いついて絶対に損はないマンガのはずだ(というか、最終回公開前に無料開放しないかなぁ)。