2020年11月 - COMITIA 134 / ニューヨーク公共図書館 / 方形の円 他

COMITIA 134

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今年最初で、おそらくは最後になるであろう同人誌即売会への参加。直前になって開催に気付き、そしてカタログ購入が入場には必須であり、すでに各書店からは在庫が払底しつつあることにも気付き、ダメ元で当日のカタログ販売に頼ってみることに。当日用意されているカタログは3000部ということで、 Twitter を眺めていても諦める声が多く、自分もまぁ難しいだろうな、でもビッグサイトの空気だけでも吸えればな、という意識で開会30分後ぐらいにゆるゆると向かったところ、存外にカタログの在庫がまだあるようで無事に入場できた。あのあと、カタログはすべて捌けたんだろうか。コロナでそもそも来ていない人が多いのか、3000部という部数を聞いて諦めた人がかなり多かったのか。

ここ数年、僕が参加する同人誌即売会コミケコミティア、文フリ、あとは職業柄 技術書典 というだいたい4つがメインになっている。コミティアは好きで。オリジナル作品を発表する場なので、「見たこともない作品」に出会えることがほとんどで、ものすごく刺激になる。ビッグサイトに集まった数千ものサークル、それぞれが自分には思いもつかないようなその頭の中をフルに開示してくれているのが楽しくて、何周もぐるぐるいつも回ってしまう。クラウドファンディングにもお金を出したくらいには、このイベントには無くなって欲しくないと思っている。

ずっと家にいるとどうしても刺激が少ない。セレンディピティが少ない。定期的にこういうイベントに行って、この世界には読み切れないほどに多くの物語があるんだって実感を得ることは、生きる活力を得ることだったんだな、と思う。規模縮小と言えど、開催されて本当によかった。

ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス


『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』予告編

ニューヨークにある、100年以上の歴史を持つ大規模な私立図書館、ニューヨーク公共図書館を題材にしたドキュメンタリー映画。3時間半にも及ぶ大作で、元を辿ると2019年5月に神保町の岩波ホールで公開されていたときに「見に行きたい」と思いながらなんとなく時期を逃してしまい、その後も各館で公開されながら行き逃し続け、結局 Prime Video での視聴となった。実際のところ、見ながら「これは寝るなぁ」と思ったので、家で見るのは正解だったかもしれない。

ドキュメンタリーと言えば普段は見られないバックヤードの映像があったり、随所にインタビューを挟んだりするものだが、そういう作り手の主観的要素はほとんど廃されている。図書館内の光景、中で開かれているイベントや講演、図書館員たちの会議、それらの映像をただ断片的に繋ぎ合わせただけで構成される。

私立でありながら公共 (public) と称するこの図書館は、単なる本の貸し出しにとどまらない、図書館の社会的役割を強く意識している。例えばモバイル Wi-Fi ルーターの無料貸し出しといった事業。日本でもよく取り沙汰される、館内に滞在するホームレスに対するクレーム問題に関しては、最終的に変えるべきはホームレスの扱いに関する内規ではなく、この街の文化であると言及する。館長の Anthony W. Marx が「教育と情報のアクセスが不平等を根本的に解決する」と語っているのが象徴的だ。

ギョルゲ・ササルマン『方形の円』

36の架空都市を描いた、数ページ程度の短編をつなぎ合わせた1冊。ルーマニアで1975年に刊行された原著が、30年以上を隔てて邦訳された。

SF好きは都市が好きだ、みたいな話を先日どこかで見かけた。ミエヴィルの『言語都市』、神林長平『僕らは都市を愛していた』など、思い当たるものは僕にもいくつかある。都市とは人の生が時代的に、地理的に、2方向に折り重なって出来上がったものであり、それは人の物語そのものと言ってもいいと解している。都市を描くことは、それ自体が物語を語ることだ。

1つ1つの短編は、物語というよりは、古くから語られている寓話のような語り口で、読み応えは思いのほかあっさりとしている。それ故にいくらでも読み返しながら、複数の都市を行ったり来たりして楽しめる本でもある。

みかわ絵子『忘却バッテリー』

少年ジャンプ+の人気連載。知人のすすめで読み始め、一気に単行本化されていない最新話まで読んだ。単行本をすべて読み終えたあと、アプリから最新話まで追いつけてしまうというのは漫画アプリの優れた点の1つだと思っている。

しかし、どう評していいかすごく難しい漫画。主人公の清峰葉流火(どんな名前だ)と要圭は、中学生野球、いわゆるリトルシニアで名の知れた天才バッテリー、だったのだが、高校進学直前にキャッチャーである要が記憶喪失に陥り、野球もまったくわからない、ただのお調子者になってしまう。本来であれば私立名門高校の推薦すら受けられるはずの要はそんなわけで野球部のない都立高校に入り、要としかバッテリーを組む気がない清峰も一緒に入学するのだが、そこには中学時代、2人に心を折られて野球を辞めた天才たちがいて、まぁ結局野球をやることになっていくのである。

敵同士であった天才プレイヤーが、偶然集ってゼロから甲子園を目指す、筋書きだけ見れば青春スポーツなのだが、記憶を失った要のキャラがだいぶ「ひどい」ものになっており、基本のテイストはかなりギャグに比重が置かれている。それは1話を読んでもらえばわかると思うし、その上で「先日スペシャルアニメになった際、要の CV が宮野真守だった」と言えばわかる人にはさらに伝わるだろう。

なの、だが、徐々に雲行きは変わっていく。幾人もの心さえ折ってきた天才バッテリーと、折られた心を再起動させた選手たち。『ハイキュー!!』のような、終わりから始まった物語が、そう容易い道を歩めるはずもなかった、のかもしれない。読むなら今は絶好だと思う。おすすめしたい。

Giga & KIRA『GETCHA!』


Giga & KIRA - 'GETCHA!' ft.初音ミク & GUMI【MV】

先月のヘビロテ。ポップすぎるしキュートすぎるしクールすぎる。