円城塔『文字渦』

- 作者: 円城塔
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2018/07/31
- メディア: 単行本
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円城塔による悪ふざけと言ってしまうと軽いが、ここまで徹底した悪ふざけもそうそうないし、突き詰められた遊びというものは、笑えると同時に深い感心ももたらすものだということを味わった。文字フェチ、言語フェチ、本好き、プログラマーあたりは余さず読んでほしい本だが、本音としては日本語話者全員に読んでほしい。
何を語ってもネタバレになりそうだし、前情報を入れないほうが絶対に楽しめる本だと思う。筋書きというものも語りづらい。円城塔による、文字に関する歴史捏造であり、架空の未来であり、あり得たかもしれない現実であり。「昔、文字は本当に生きていたのだと思わないかい?」というコピーから開かれるその歴史は、実在した中国王朝の変遷を真面目に紐解きながら、そのトーンを崩さず真顔で「始皇帝の陵墓から三万の『漢字』が発掘された」などとよくわからないことを言い出すので質が悪い。原初の混沌からは神々と大地、そして元始天尊だけが読むことのできる「飛天の書」が生まれたのだと言うし、バベルの塔の崩壊は、積み上げられた本の重さに耐えきれなくなったことによる自壊らしい。故に、人々の言葉は乱れたと。
発売直後ぐらいに、本書におけるルビの使い方で少しバズったことがあったが、これに留まらず印字でもひたすら遊んでいる。文字と書に関する架空の物語、というだけではなく、この本自体が文字と書についての遊びに満ちている。
また本書についてのインタビューが、プログラム管理ツールである GitHub で校正された様も見られたりするので、合わせて。
SSSS.GRIDMAN
OxT「UNION」(TVアニメ「SSSS.GRIDMAN」OP主題歌) 試聴動画
毎クールのアニメ、最近は3話ぐらいまで終わったタイミングで、ザッとTL見て面白そうなアニメをピックアップして、Amazon Prime ビデオから追いかけてみるという視聴スタイルになってきた。今季の自TLだとそれが『SSSS.GRIDMAN』だった。
自分は特撮オタクではなくて、日本における8割方の男性と同様、幼少期に「卒業」してしまった口だし、電光超人グリッドマンも世代ではあるのだけど見ていなかった。メタルヒーローシリーズは見てたのだが。ただ、今作は特に前知識がなくても楽しめている。アニメを見てから特撮版のことを調べてみると、コンピュータから繋がった異世界での戦闘が現実に影響を及ぼすという、わりと今風の設定が当時から踏襲されているものだったり、案外原案を踏まえているのだなというのがわかって面白い。
突き抜けた面白さというより、小さな加点ポイントがいくつもあるような感じのアニメ。新条アカネのぶっ壊れたキャラクターだったり、ケレン味と特撮っぽさのあるグリッドマンの格闘だったり、台詞より描写で語らせる全体の画だったり。どことなくストーリーはぶっきら棒にも思えるが、昔の特撮ってこんな感じだったよねぇ?という気がしつつ、特ヲタじゃないので、そのへんの言及は控えたい。オーイシお兄さんの主題歌が超特撮感あって、深夜に見てると変な気になる。
ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風
荒木飛呂彦と言うと、昨今はGUCCIとコラボしてたりルーブルで展覧会をやったり、すっかりアーティスティックな評価を得るようになっているが、そのあたり開花するようになったのが第5部? イタリアという舞台も相まってか、キャラの服装センスとかが尖ってきたように感じる。新宿ルミネとコラボもやっていたけど、ファッションビルに等身大ポップが立っていても全然違和感ないのがすごい。
原作未読で、アニメからジョジョに入った自分もいよいよ5部にまで来てしまった。金曜、1週間終えて帰ってくるとジョジョが見られる、というリズムにもだいぶ馴染んでいるので、またこのリズムでしばらく生活できるのが嬉しい。
あfろ『ゆるキャン△(7)』

ゆるキャン△ 7巻【Amazon.co.jp限定描き下ろし特典付】 (まんがタイムKRコミックス)
- 作者: あfろ
- 出版社/メーカー: 芳文社
- 発売日: 2018/10/11
- メディア: Kindle版
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原作は1巻だけ買っていたのだが、ふと気が向いて先月出た7巻を買ってみたら、絵柄がドンピシャに好みであることに気付き、そのまま全巻今更買い揃えた。
ソシャゲの影響もあるのか、昨今はわりとキラキラした絵柄が流行りのように思えるけど、あfろ先生の絵は過度な装飾は抑えめで、線がシンプルで、目のハイライトもそれほど入れすぎていなくて、だけどイキイキとしていて可愛くて、そして何よりオシャレ。アニメも良デザインではあったが、原作の特に表紙などに見られるカラー絵は、色彩センスがずば抜けている。なでしこたちも、よくよく見るとこんなオシャレな女子高生おらんやろ?!って感じなのだが、ネイティブ柄を着ているからなんとなくオシャレに見えてるような気もするし、いやでもやっぱり、冬の重ね着をこれほどたくさんの色を使いながらゴチャゴチャせずまとめるってすごいよなぁと思う。リンちゃんが黒の長袖カットソーをよく着てるのとか、みんなシャツスタイルが中心なのとかめちゃくちゃ好み。あと、わりとアニメのときに「温泉はいらん(そういう欲求を満たす類のアニメではない)」的な意見を見かけたのだが、普段カラフルもっこもこ状態の女の子たちがたまにホッソイ線を見せるというのは、エロ目線でなくてもメリハリとして良いものだと思う。そしてこの絵柄は、ダウナー系のキャラであるリンや桜によく合っている。
賑やかなグルキャンも良いのだが、今巻は『孤独のグルメ』をも彷彿とさせるリンのソロキャンの楽しみ方と、なかなかソロになりきることができないキャラクターたちの関係性とが楽しい。グルキャンとソロキャンを上手くスイッチしながら繰り返し描いていて、そしてキャラクターによってグルキャン、ソロキャンの楽しみ方も違うのだと示されてるのが美味いなぁと思う。
hiruneko『九月の夜の鯨』
今月の1曲。