the world was not enough

物語偏愛者の詭弁と戯言

2020年3月 - 薄明の翼 / LOVE AND DEVIL / フードコートで、また明日。 他

COVID-19 の影響でチケットを取っていたライブは2本中止になり、行きたかった東博の『出雲と大和』は会期途中で中断され、まぁなんとも散々だった3月。家での読書やゲームが捗りそうな一方で、よく行く映画館、ライブハウス、カフェなどが経営危機を迎えないかと恐々ともしている。今年のマジカルミライは大丈夫だろうかとか、そういうことも気にはなるけれど、とかくこれ以上何も失わずにこの難局が越えられたらいいと、それだけを願うこの頃。

薄明の翼


【公式】『ポケットモンスター ソード・シールド』オリジナルアニメ「薄明の翼」 第1話「手紙」

ポケットモンスターを、特に子供の頃にプレイしたことのある人ならば、誰しもが「ポケモンが実際に存在する世界」を想像するものだと思っている。それは幾度となくメディアミックスを通じて、様々な解像度で描かれてきた。自分にとっては『ポケットモンスター SPECIAL』で真斗先生が具現化してくれた温かな絵柄が最初の理想だった。Pokemon GO はフィクションの世界ではなく、現実の側にポケモンがやってきた世界をつくってくれた。映画『名探偵ピカチュウ』はリアリティの極地だったのかもしれない。『薄明の翼』はそのどれもと違って、ポケモンと社会、風俗、文化というものを端的に描いている。

つまるところ、第3話までの『薄明の翼』は、いずれもチャンピオンであるダンデを取り巻く物語になっている。ダンデに憧れる病弱な少年、ダンデに敗れて修行に励むジムリーダー、ダンデを追いかける弟。『ポケットモンスター ソード / シールド』の舞台であるガラルは、他の地方にはない、ポケモンバトルが興行として大きな人気を博しているという特徴を持つ。そのような土地における「ポケモンと人々」の日常は、ポケモンバトルのチャンピオンを中心として回っていくのだろう。さながらサッカーが盛んな国における、サッカーのスーパープレイヤーのように。単なる自然、生物の一部ではなく、社会に取り込まれた存在としての、ポケモンのリアリティがここにはある。

こういった架空の世界観を精緻に描くという点において、スタジオコロリドの起用がまた見事にマッチしている。ジョンやホップの部屋に飾られたポスターやグッズ。街中にいるポケモンたちの表情といった、細かな部分の描写までがとても丁寧だ。今年はこのあと、コロリドの作品として映画『泣きたい私は猫をかぶる』と、久保帯人原作による『BURN THE WITCH』の2作品も控えていて、こちらも楽しみなところ。

4U『LOVE AND DEVIL』


【Tokyo 7th シスターズ】4U『LOVE AND DEVIL』Trailer

UNISON SQUARE GARDEN 田淵智也提供によるナナシス楽曲第2弾。第1弾にあたる Le☆S☆Caミツバチ』がそれなりにしっとりとアイドルらしい歌に仕上がっていたのと対照的に、と言っていいのか、こちらはなんともやりたい放題の派手な1曲に仕上がっている。 4U が UNISON と同一構成のスリーピースバンドだからだろうか。先に貼った動画で聴ける部分だけでもわかるが、特にドラムの荒ぶり方が凄まじい。この音の奥に見えるのは、どう考えても女子高生である佐伯ヒナではなく、鈴木貴雄の顔だ。実際のところ録音に参加した楽器隊も強くて、THE KEBABS の鈴木浩之や、ヒトリエのイガラシが参加していると言うので笑ってしまう *1

しかし、その分なんとも中毒性の高いナンバーでヘビロテが止まらない。先日のエントリー Tokyo 7th シスターズ『EPISODE 5.0 -Fall in love-』 - そして、大人になる - the world was not enough で書いた通り、エピソード側はそれなりに重い展開になっているし、この 4U 新曲と両A面(っていまどき言わないのかな)で発売された KARAKURI の新曲も、エピソードに合わせて少し未来の発表曲という設定になっているなか、 4U の「そんなの知ったことか」と言わんばかりにいつも通りに好き放題な感じがなんだか安心する。恐ろしくガチで激しく、演奏のクオリティも高い1曲だが、それでも 4U の楽曲として納得感のある仕上がりになっているのは確かなのだ。田淵智也、本当にいい仕事をしてくれる。

成家慎一郎『フードコートで、また明日。』

これは文学だと思う。この距離感、放課後のフードコートという絶妙な設定。彼女たちの会話。すべてが文学的。ずっと見ていたい。

小川一水『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』

「百合SF」という、一昔前であれば「なんだそれは」と言われそうなジャンルがどうも「きている」らしい。昨年早川書房から発売された百合 SF アンソロジーアステリズムに花束を』に収録されていた、小川一水『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』が長編化された。

『アステリズム〜』はそれなりに変化球に富む一冊で、 SF 的なギミックと絡めて様々な女性同士の関係性が提示される。なので「なるほど、こういう百合もあるのか」「こういう角度から百合的な関係を描けるのか」と、いろんな方向からぐるぐる頭を捻りつつ読むような感覚があった。そこに来て最後に配置されたこの『ツインスター〜』は、長年ライトなものからハードなものまで、多くの SF エンターテイメントを書いてきた小川先生らしい、豪速球どストレートの1篇だった。操縦者の「意思」によって自在に変形する宇宙船に2人で乗り、宇宙で漁業をする話、と言葉にして書いてしまうとよくわからない感じがするのだが、読むとすべてがわかる。圧倒的にわかる。彼女たちが宇宙船を繰り、魚(?)たちと大立ち回りを繰り広げる様が目の前にぐわんぐわんと広がるし、百合としか表現しようのない感情の大波がざばざばと押し寄せてくる。まぁなんともパワーに満ちた作品である。

実のところ長編版はまだ3分の1しか読んでいないのだが、短編版で上がったハードルを軽々越えてくれそうな匂いはすでにしているので、自宅に引きこもりながら読み進めたい所存。

『Planet Traveler feat. 初音ミク


[KARENT CD] KARENT presents Planet Traveler feat. 初音ミク

今年の SNOW MIKU 2020 CD。残念ながら会場に行くことが叶わなかったので通信販売でゲットした。特にイベントテーマソングだったはるまきごはん『ぽかぽかの星』がたまらんです。 MV も合わせて見ると、一度でも SNOW MIKU に行ったことがある人であればグッと来てしまう仕上がり。


ぽかぽかの星 / はるまきごはん feat.初音ミク【SNOW MIKU 2020】