「陰キャならロックをやれ!」を真に受けて良いのかはよくわからない。自分は陰キャだと思うけど、ロックは陽のものという感覚が強くて近づけなかった。最近はそれこそギターヒーローよろしく、ネットという活動の場があるとまた話が違うのかもしれないが。自分の場合、中高生の頃はBUMP OF CHICKENばかり聴いていたのでASIAN KUNG−FU GENERATIONはそこまで通ってきていないんだけど、唯一持っていたアルバムが『ワールド ワールド ワールド』で。なんでかって言うと『アフターダーク』が好きだった。もしかしたら『BLEACH』から入ったのかもしれない。でもBLEACHも破面編以降を読んだり見たりした記憶がほとんどない。どっちが先かなんて、さすがにもう覚えてはいない。
『ぼっち・ざ・ろっく!』のアニメは、だからそういう意味でのドンピシャ感があった。「ぼざろ」でアジカンがよく聴かれるようになって、「こんなバンドが埋もれてたなんて!」というコメントを見かけた、なんていう冗談なのか都市伝説なのかもわからないような話があったりしたが、実際のところどうなんだろうか、と思ってWikipediaで調べてみると最近の曲もしっかりオリコンで上位に入っていたりはするわけだが、そもそも人気かどうかを確認するのにオリコンを見に行くこと自体がもはやもう、というところはあり、リーチしているのはアラサー以上、ぐらいの世代なんだろうか、とするとこの作品自体もアラサー以上あたりがターゲットだったんだろうか、というのは、作曲陣に谷口鮪が入っているあたりからしてもそうだったのかもしれない。
『結束バンドLIVE -恒星-』はアーカイブ配信を後追いで見た。「エモいな」、が最初の感想だった。アニメを見たときにもエモさは感じた。それはノスタルジーに起因するのだろうか。アジカンの曲を使っていたり、サブタイトルなどで要素を散りばめたりしてニヤニヤできるから、というのが拭えなくて、それは物語本体を素直に楽しめていない気がしてもやもやとしたんだけど、素直に楽曲だけで、ライブの形で楽しめたので、なんというか、自分で完結した話ではあるが、ホッとした感覚があったというか、アジカンと切り離してただ結束バンドのライブとして良かったと思った。
長谷川育美のボーカルがとにかく魅力的だった。力強い、という感じではないがしっかりと芯があって伸びやかな声で、それでいてロックに相応しく勢いとメリハリのある歌い方だった。それがライブ後半になっても衰えないのがまたいい。エアバンドでもいいので4人全員が壇上にいる、という構成ではなかったのは少し残念ではあったけれど、ブックから本番まで1か月なかったという話だったのを聞くと、結構急に決めたのかなとも思うし、そこまで凝った形にできなかったのは仕方ないのかもしれない。しかしそれ故にというのか、アンコールになって主人公を演じる青山吉能が満を持して弾き語りで出てくる、という演出が活きたようにも思う。演奏をするうちにステージに慣れていったのか、徐々に増していく声量も相まってなんともぼっちちゃん感があった。
「ぼざろ」が良かったのは、過剰に成長ものではないところだった、自分にとっては。成長ものではあるけれど、過剰にそういう性質を持っているわけではない。ぼっちがああいう性格であることを周囲は理解して「しょーがねーなこいつは」ぐらいの扱いなのがよかった。もちろん、バンド活動の上でさすがにそれは、という場面では止めに入るわけだが、そうじゃなければ「まぁ、いつものことか」という感じのドライさがある。それは彼女のキャラクターを受け容れているということでもある。過度に成長を促すのは現状の否定でもあるわけで、そうではない、というのが、ストレスなく見られるポイントであり、ぼっちが結局のところ奥底にはぼっち感というか陰キャを抱えたままなのが物語として大きいのだと思う。
だから、「お前、その歌詞を郁代に歌わせるのか」という曲が出来てくる。『ギターと孤独と青い惑星』が好きで、最初のほうはそれなりに綺麗な歌詞を書こうとしている感があったのが、徐々に興が乗ったのか、本音ダダ漏れで言いたいこと書き殴りじゃねーかみたいな詞になっていくのが高校生感があっていい。タイトルからして、自分の書きたいこととほのかなJ-POP要素みたいなのがごっちゃとしている感がある。「うるさいんだって 心臓」のところが気持ちよくてヘビロテしてしまう。