『ガールズ&パンツァー 最終章』第2話上映中PV 知波単学園ver.(60秒)
第2話を見てハッキリしたというか、自分の場合はハッキリと自覚したことがあって、今回の最終章、一番の注目点は「誰が大洗を打ち負かすのか」という点にあると思う。より正確に言えば、大洗が負けても構わないという状況に面白さの真髄がある気がしている。
これは完全にメタ的な話になってしまうので楽しみ方としては邪道なのかもしれないけれど、TV版と劇場版は「廃校」というリスクを背負っていたがために、シナリオ上大洗が負けてしまうことは考えにくかったし、視聴者としても大洗の立場で「勝たなければならない」という思いを共にして手に汗握っていたと思うんですよ。特に劇場版終盤の敵味方ともにバシバシと主要なメンバーすら脱落していき、最終的にアリス、みほ、まほという3人だけが残るあたりの張り詰めた緊張感って、大洗に負けてはならない理由があったからこそもたらされたものであったと。しかして今回は「無限軌道杯で河嶋桃の実績を作って AO 入試にねじ込む」というだいぶふわっとした動機の戦いであって、以前ほど切迫した勝利への渇きは無いと思うんですよね。それに加えて第2話では、知波単学園がかなり真剣に大洗対策、あるいは自分たちの弱点の補強を施した上で「打倒大洗」を掲げてきた。この2回戦はおそらく今までで初めて、大洗にとっての「挑戦」ではなく、他校から格上の存在とみなされた上で挑まれる「防衛」の戦いになり、そして先の「動機の欠如」故に、もしかしたら大洗が負けるかもしれないとか、頑張っている知波単学園に勝ってほしいという純然たる気持ちがファンの中に沸き起こりやすくなっている。つまるところ最終章の面白さは、「誰が大洗を打ち負かすのか」という楽しみ方、別の観点で言えば「他校を心の底から応援すること」や「純粋な各校のガチンコのぶつかり合いを楽しむこと」が初めてできるようになったところにあるのではないかと。
ガルパンは主人公たち以外の高校がどこも魅力的で、どの高校にもファンがいるし、各高校同士を組み合わせて(組み合わせて……?)楽しむことができるというのも周知のこと。原作の中に因縁や関係性が渦巻いているあれやこれやもあれば、まほチョビのような原作にほぼ一切ない集団幻覚をファンが共有していることはたびたびネタになるし、原作では描かれていないライバル高同士の試合を描いた同人誌も少なくない。つまりみんな、まだ見ぬ絡みが大好きなんですよ。これは自分が持ってる同人誌ですけど、原作では因縁が描かれているのみである2校を戦わせた サークル灼熱『継続対プラウダ』 があったり、同じくサークル灼熱が手がけた、アニメではカットされた準決勝のカードを描いた『聖グロ対黒森峰』(URL見つからず)があったり、あるいは作中でみほが一言だけ言及している、1年前に黒森峰が継続と練習試合をした、というのをオリジナルで漫画にした 日場坂れん『ラップランドの空の下』 なんてのもあったりするわけです。
最終章ではどの高校とどの高校が絡むのか。今回初めてトーナメントの全貌が明らかになったことで、その点も大きく楽しめる要素となった。2回戦で知波単学園と対戦中の大洗は、これを勝ち抜けば次は継続 vs サンダースの勝者と当たる。下馬評であればサンダースなんでしょうけど、継続との初対決はやっぱり見てみたい。意表をついた戦術が得意な大洗が、同様にトリッキーな展開に走りがちな継続とどう戦うのかはすごく気になります。いまだにミカ車以外の存在を見たことがないけれど、この高校って戦車何台あるんですかね。物資に恵まれていないという点でも大洗と似た臭いを感じるような。一方反対ブロックは、黒森峰 vs プラウダという昨年度全国大会決勝の因縁カードと、聖グロ vs アンツィオの初対戦。順当に考えると黒森峰と聖グロによって準決勝が争われそうだけど、その勝者がどちらになるのかが本当にわかんなくて、 Twitter で検索しててもまぁ割れてるんですよね。隊長となったエリカとの決着をつけてほしいという声がある一方で、大洗が公式戦、非公式戦含めて一度も勝利したことがない、聖グロへのリベンジを臨む声も。個人的には聖グロに勝つ、というのを大洗に果たしてほしいなぁと思うんだけど、エリカがプラウダや聖グロに敗れる、というのもそれはそれで救いが無さすぎる気がしてどうよ、というのもあり。エリカに関しては二次創作において1年生時代のことが描かれることも多く、副隊長の座をかっさらっていったみほに嫉妬していた、責任を一人でかぶるようにして転校していったみほのことが許せなかった、西住流をずっと追いかけてきたのに、目の上のたんこぶのように立ちはだかるみほと付かず離れずな関係にいたなどなど、様々な想像がめぐらされてますけど、実際のとこ原作ではそんなに心の内を明かしていないので、彼女が実際みほに対してどういう思いを抱いてきて、今はどう思っているのか、そのあたりは補完してくれるとありがたい。
見たいものがたくさんあって、それがファンによる二次創作の活性化にもつながっていて、テレビシリーズも劇場版も終わってからそれなりに時間が経った「2018年」の夏コミで初めて単独ジャンルが分置されるに至ったのがガルパンという作品です。各キャラ、高校をもっと掘り下げてほしいし、もっと絡めていってほしい。今回の知波単学園の描かれ方は、それに十二分に応えてくれたものだったし、いくらでも今後への想像を掻き立ててくれるトーナメントの公開もなかなか上手かったなーと思ってます。そのトーナメントの先で、誰が大洗を打ち負かすのか。これまでまるでネタキャラのような扱いを受けてきた知波単学園の見事な成長っぷりは、大洗以外の高校すべてについて、どの高校も等しく応援することを可能にしてくれたように思う。2話で伏線が強調されたように、島田愛里寿との「後腐れない戦い」も実現しそうなのが純粋に嬉しい。
さすがに1話1時間に満たない OVA の劇場上映スタイルで、計6話あるのに1話から2話までのスパンが1年半というのは空きすぎにも程があるので、その点だけ何とかならないものかと思う。しかし水島監督も今は SHIROBAKO 劇場版で忙しいだろうしのぉ。