本を捨てられない人と、久世福商店と、ZINEの行方と。

本が捨てられない。買った本を全部とっておきたい、という意味ではなくて、もうこれは不要かな、という本であっても「捨てる」という手段を執れない、という意味で捨てられない。

賃貸で、それほど広い家に住んでいるわけでもないので、本が置けるスペースは限られる。だいたい毎年年末に、大掃除ついでに少し本を処分している。段ボール1箱分ぐらいにはなる。でも捨てるという処分はなかなか執れない。本は有限な資産だ、と思っている。発行部数は限られている。ずっと増刷され続けるわけでもない。それは人気だった本やマンガでも同様で、『さよなら絶望先生』の増刷が停まっている、という話が何年か前に話題となった記憶がある。だから、流通しているうちのその貴重な1部を、自分が勝手に処分していいものだろうか、という思いが常にある。

まあ、とはいえ大量に刷られてそうな本とか旧版の本とかは「別にいいか」と捨ててしまう場合もあるが、出来るなら捨てずに市場で回り続けてくれたら嬉しい、と思う。でも売るというのもなかなか難しくて、段ボール1箱分をどこか古書店へ持っていくのは面倒だし、持っていく、あるいは取りに来てもらうにしてもどこに頼めばいいんだろう、というのがずっとわからない。若い頃はチェーンの古本屋でよくマンガを売ったりもしていたが、30冊とか持っていっても昼食代にもならなかったりして、別にお金が欲しいという目的でもともと売ろうとしていたわけじゃないんだけど、これはこれで寂しい思いがしてくるのも事実だったりする。あと、価値がある本とか、希少な本とかを、ちゃんと仕分けてくれているのかも、よくわからない。

別に回し者でもなんでもないのだが、最近は VALUE BOOKS で売っている。2022年末の大掃除のときに初めて売った。そのときもどこで売ればいいのかわからなくて、いろいろと探していたときに見つけたお店で、ここがよかったのは、値段を付けられなかった本であっても、一部を本としてそのまま活かせないかという取り組みをしているところだった。

corporate.valuebooks.jp

僕の思いは、本を本のままに活かして回し続けることだったから、それに合致するのがここだった。調べてみると、内沼晋太郎さんも関わっていると書かれていて、あの方の関わった書籍やお店にはいくらか触れたことがあったので、それなら信頼できそうだな、という個人的な感覚もあった。15時までに集荷を申し込めば、当日中に来てくれるというのもよかった。本棚から出して、さあこの本たちをどうしよう、というときに、ああ、バリューブックスがあったか、と思い出せば、その日のうちに部屋が片付く。

昨年末に初めて売って、すると次回買取のときに送料無料となるクーポンが来た。とはいえ、売ったばかりだしなぁ、と思いながら年を越したら、3000円以上本を売ると「お年賀ギフト」がもらえるという キャンペーン が始まった。え、こんなもらえるの?とちょっとびっくりするぐらいの内容で。3000円売って2000円以上はありそうなギフトがもらえるとなったら売らなきゃ損じゃない、と倒錯したような感覚に陥り、ゲームなどもかき集めて2回目の買取を申し込み、結果、なんか高くて手が出せずにいるけど気にはなっていた久世福商店の「竹」セットをゲットした。それと前後して、たまたま別の人からも久世福商店のギフトセットをもらう機会があり、この1年は久世福三昧でごはんのおともに困らずに生きられたし、なんならまだ、1年前にもらった七味なめ茸が冷蔵庫には残っている。それから1年経ち、年末にまた本を処分したくなり、いや、でもこれは、年明けまで待てばまた「お年賀」があるのでは……?と現金にも思い出し、待っていたところ、 あった 。今年は中川政七商店の「竹」セットがもらえることになった。

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なので一般流通している本については、基本的にバリューブックスに売るというスタンスができつつあるのだが、問題は同人誌やZINEである。むしろこちらのほうが市場に流通しているうちの1部を葬ることの影響が大きい。とはいえどこで売ればいいのか。二次創作の同人誌ならどこかしら持っていけば売れそうだが、一次創作が多いZINEは。売れるものなんだろうか。

実際のところ、検索するといくらか買い取ってくれそうなお店が出てはくるのだが、やはり数は多くない。あとはなんとなく、カルチャー色の強いものなら、まんだらけに持っていけばなんかどうにかしてくれそうな気もしてくる。いやカルチャー色とか関係なく、中野ブロードウェイに行けばなんでも引き取ってもらえるんじゃないかという気はなんかする。最悪困ったらあそこへ持っていけばいいか、と最近ちょっと考えているが、本当にそうか?とも思う。

幸いなのは、これらが文字通りに「薄い本」であることがほとんどで、本棚を圧迫する幅としては小さいし、スペースを空けるに当たっては商業誌を優先的に犠牲としている。文フリもビッグサイト開催となるほどの盛り上がりを見せる時代。みんなどうしてるんだろうなぁ、ということを考える。