同じ著者を読んでいるのに、話が合わない

先週から『星新一の不思議な不思議な短編ドラマ』が始まった。NHK総合テレビで、月曜日から木曜日までの22:45から、15分1話完結を基本とした短編ドラマ。新番組というわけではなくて、2022年に放送されたドラマの再放送にあたるのだが、僕は見るのが初めてになる。それにしてもこの放送時間、月曜はEテレ『100分de名著』と被るので、本好きを泣かせる編成だなとは思う。実際、今週も先週も『名著』を半端にしか見れていない。

1日目は有名作から、ということなのか、『ボッコちゃん』だった。バーで接客する女性型ロボットをめぐる、これは悲恋と言っていいんだろうか。水原希子の演じるロボットがあまりにもハマっていた。台詞も、表情も、動きも。

1人で見ていたところ、妻が途中からやってきて、一緒に見始めた。彼女は僕ほどにSFを読むわけではないので、星新一を知っているのかも僕はわかっていない。終わったら何か説明したほうがいいんだろうか、と思いつつ、終わると、彼女のほうから「あの台詞がなかった」という話をし始めた。原作では最後にボッコちゃんが告げる台詞が、このドラマではカットされていたらしい。僕は『ボッコちゃん』を読んだのはおそらく小学生の頃で、あらすじは覚えていたものの、そんな台詞まではひとつひとつ覚えていないから、どこかがカットされている違和感には気付かなかったし、彼女の話を聞いてもきょとんとしてしまった。彼女に言わせれば、その台詞こそがこの作品の根幹であり、よもや外されるとは思わなかったと心底残念そうだった。そうなのか。そうなんだ。思わぬ形で、星新一作品の強火な感想を聞けてしまった。

聞けば、小学生の頃に何冊か読んでいたのだという。一般文学の入り口として、やはりみな星新一やシャーロック・ホームズを小学生時分に読むものなのか。ただ、パッと作品が思い出せるわけでもないらしい。それは僕も同じで、有名どころから『午後の恐竜』は知っているか?と聞いても、知らないようだった。他に、うーん、なんか穴に向かっていろいろ捨てるやつ(タイトルが出てこなかったが『おーい でてこーい』)、と聞いても、それも知らないようだった。他にいくつか挙げてもみるが、やはりピンとはこないらしい。その後、彼女からもいくつか作品が挙がってきたが、逆に僕もそれらを知らない。同じ著者を読んでいて、こんなに話が合わないことある?と笑ってしまった。まぁ星新一のショート・ショートは1000編以上あるそうだし、僕もそこまで読んでいるわけじゃなくて、せいぜい数冊だ。読んでいたのはインターネットもまだ未発達だった小学生の頃で、情報を集めた上で読んだわけじゃないから、それがベストセラーだからとか、有名だからなんて理由で選んだりもしていない。となるとむしろ、被るほうが珍しいのかもしれない。

本棚を漁ると5冊の星新一
本棚を漁ると5冊の星新一

子どもの頃の本は、多くは実家に置いてきたつもりだったが、本棚を漁ると5冊の星新一が出てきて、意外と多いな、と思った。大人になってから買ったものもあるが、カバーをなくした『かぼちゃの馬車』や『ほら男爵 現代の冒険』は小学生の頃に読んだ記憶があり、小口はもうダークブラウンに焼けていた。