- 作者: kashmir
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2017/01/31
- メディア: コミック
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kashmir の『ぱらのま』がすごく好きで。鉄分多めのダウナー系女子が、鉄道を使って一人旅をする、ただそれだけの漫画なのだけど、目の付け所が一般的な観光地ではなく、路面電車に乗りたい!東海道新幹線で東京に帰ってくる途中で下車して「ちょい寄り旅」がしたい!というような鉄っぽい欲求だったり、街の地理的な特徴だったり、ブラタモリや孤独のグルメが好きな人であればハマれるような、そういう雰囲気。特に目的地を定めるでもなく、一個の欲求突き抜けで取りあえずぶらっと旅に出てみる、という適当さがいかにも一人旅の醍醐味だなという感じでそそる。
それで最もそそってたのがこの Line.2(第2話)、サンライズエクスプレスに乗って香川へうどんを食べに行くときの描写。寝台特急。子どもの頃から憧れる響きではあったものの、乗る機会がないままこの歳になってしまっていて、北斗星もトワイライトエクスプレスも気づけば無くなってしまった。これはもう今のうちに乗るしかないし、この歳だからこそわかるであろう、「寝台特急で寝っ転がりながら会社帰りのサラリーマンを眺める」というのが猛烈にやりたくなって、やってきた。
作中では瀬戸大橋を越えて香川へ向かう、サンライズ瀬戸に乗っていたが、香川は一昨年行った一方で山陰地方には足を踏み入れていないこともあり、今回はサンライズ出雲に乗ることにした。東京駅を22時発、出雲市駅に着くのが翌朝10時頃。丸12時間近い旅。
あんまり自分は「満足に寝られない」という状況に強くなくて、夜行バスなんて使おうものなら翌日は体調が崩れまくって旅行どころではなくなる。夜行列車はさて、どうだろうなというのがあり、直前まで緊張していたしアルコールも控えようと思っていたのだが、いざ出発30分前に列車が入線して、部屋に荷物を置いてベッドに腰掛けてみると、このクッソ狭い場所で12時間も好き放題できるし、窓からは景色が眺め放題なのかとテンションががくがくと上がってしまい、控えめにアルコール4%のウメッシュを準備するに至った。乗客は平日でも案外に多く、部屋の前では見知らぬおじさんとおばさんが、暗証番号式ドアの閉め方についてこうかな?違うな、こうか?と試すなどしていた。明日の朝までは、この名前も知らぬ方たちと運命共同体なのであると思うと、不思議な気分になる。
この優越感である。しかしこちらは完全にプライベート気分でゴロゴロしているが、向こうからも丸見えなので、気を抜くと大変なことになりそうだなと思った。特に翌朝、外を眺めたらびっしりスーツの人たちがいたときが焦った。
「サンライズ」の名前通りに朝焼け。5:30頃、姫路駅付近。
サンライズエクスプレスは岡山駅で前半分を「瀬戸」、後半分を「出雲」として切り離しを行うので、それにも立ち会ってみた。ここからまた長くて、最終的に出雲市駅へ着くのは切り離しから約3時間後だった。
12時間もいたので、狭い部屋と言えど最後にはだいぶ散らかした状態になった。到着した日はちょうど台風21号が猛威を振るったあの日だったが、幸いにも島根県は台風の西側になったため、そこまで酷いことにはなっていなかった。
心配していた体調の崩れもなく、夜行バスと違って「横になれる」というのはそれなりに大きいらしかった。車内販売がなく、車内で調達できるのは自販機から数種類の飲み物のみ、というのが少しさびしいが、その分東京駅で何を買おうかと迷う楽しみがあるし、買ったものをわらわらと狭い部屋に広げて、本を読んだりしながらぐだぐだと過ごす時間は、とても贅沢に思えた。是非次は瀬戸にも乗ってみたい。朝方の瀬戸大橋を渡るのはだいぶ爽快だと思う。
以下、その後の島根滞在時の写真を適当に。サンライズエクスプレスに乗ること自体がメインイベントだったので、その後はあんまり考えてなくて、適当にベタな観光地を周る感じで楽しんだ。あと、ひたすら刺し身と寿司を食った。