今年は秋ぐらいまでいろいろと忙しくて、あんまり意識的に遊びに行ったりみたいなこともなく、それで秋、もろもろのことが済んで10月中旬ぐらいに何かどこか遊びに行くか、と考えたときに「あ、ライブ」と思った。新型コロナのあれそれが緩和され、いつの間にやらライブというものが元に戻っていた。人数制限がない。マスクの義務化がない。発声制限がない。とはいえインフルエンザ流行ってますね、というのは置いておいて、推しは推せるときに推せ、と言うし、無性に行きたくなり、チケットを探して11月から12月にかけて3件ほどゲットして、まわった。渋谷のQUATTROと、国際フォーラムと、KT Zeep Yokohama。趣が違いすぎる3つの会場でそれぞれにそれぞれの楽しさがあった。
最初のQUATTROがヒトリエだった。ライブ行くか、となって最初に思い浮かぶのがヒトリエだった。ヒトリエはライブで見たい。ライブで見なきゃいけなくない?という気分が強い。どのアーティストでもそうかもしれないけど。おまけにQUATTRO。QUATTROは好きだった。奥行きがある感じではなくちょっと横に広い感じなのがいい。入って、左側にバーカウンターがあって、そのまま奥に行って、ステージからすれば右前方、柵の上、少し小上がりになっている、そういったエリアがステージ近くまで広がってる!っていうのがよくて、柵の際のところにはハイチェアとカウンターがあり、あれはもう何年も前にtoeを見に行ったときだったと思うけれど、そこには頭がだいぶ白くなった紳士が何かアルコールを片手に穏やかな笑顔で佇んでいて、自分もそういう楽しみを持った中年になりたいものだと思ったのを覚えている。QUATTROで嫌なのはセンター街の奥の方にある点ぐらいで、と思っていたら当日、ライブ中盤ぐらいで、シノダが「俺はわかっている」「お前らはセンター街を歩いてきてうんざりしている」みたいなことを言っていて笑った。
最初はその「小上がり」あたりにいたけれど2曲目から『トーキーダンス』でいても立ってもいられなくてすぐホールに下りた。2曲目から『トーキーダンス』。前では女性が1人でビール片手にふらふら踊っていた。そこから『undo』に入り、『イヴステッパー』『るらるら』とまた激しくなって、『うつつ』で締める、という構成だけでおなかいっぱいだった。シノダは激しい曲の印象が強いけれど、実際にはとても繊細な声をしていて、『うつつ』のような曲をしっかりと聴かせてくる。と思ったら中盤以降、『ジャガーノート』『Idol Junkfeed』『3分29秒』『アンノウン・マザーグース』『センスレス・ワンダー』とたたみかけてくるからこわい。
配信で何度か見ていたからそんな気がしなかったが4年ぶりぐらいらしく、どうも『REAMP』が出てから初めてのようで、ということは『うつつ』も『3分29秒』も今日初めて現地で聴くのか?という話なのだが、あんまりそういう感じがしなかった。この日の歌唱から1週間ほど前に出たばかりの『ジャガーノート』も当然ながら初めてだった。みんな聴いてきた? MV見てきた?と聞かれたが、聴いていないし見ていなかった。あえて聴かずに来ていた。当日に新鮮に聴いてみたいと思った。シノダの曲だなと思った。今までももう散々と「シノダの曲」が作られてはきているけれど、これまでにないぐらいにこれはシノダの曲だな、と思った。今までの曲はシノダの曲だけどヒトリエの曲だな、という印象が強いが、この曲はヒトリエの曲なんだがシノダの曲だった。彼だからこそモノにできる曲。まだこんなにカッコいい曲の引き出しがあるのか。という感想を、好きなバンドに対して抱けるのは最高に幸せだった。アンコールは『カラノワレモノ』からの『ステレオジュブナイル』。これもライブで初めて聴く『ステレオジュブナイル』はなんかすごい、〆だな、エンディングだな、と思った。
終わり、21時、渋谷。センター街はやっぱり苦手で、早々に109の横あたりから地下に潜り、そのまま人の少ないヒカリエのほうまで抜けて、酒を飲めない人間はライブ後のこの時間帯に入る店に困るんだよな、というところまで含めて、久しぶりにライブハウスに来たんだな、という体験だった。