the world was not enough

物語偏愛者の詭弁と戯言

『プロメア』 - 2クールアニメを2時間に濃縮したような熱気と狂気

Image from Gyazo

最初に書いておきますが、ネタバレはしないですけどある程度作品の構成などに言及はするので、鑑賞前に一切何も知りたくない場合には読まないことを推奨します。

見終わって映画館を1歩出たときに、満面の笑みで頭空っぽにして「楽しかった〜〜〜〜〜」と身体から息が抜けていくかのようなつぶやきだけが漏れて、感想としてはもうそれにすべてが集約されていると言っても過言ではなかった。さすがにそれだとブログにならないしもう少し書こうと思うけど、すごかった、上手かった、クオリティが高かったとか、そういう褒め言葉ではなくて、子供の頃に丸一日プールとか遊園地で遊んで、帰りの車に乗ってアイスとかポップコーンとか食べながら徐々に動き出す車窓を眺めてるときに、心から漏れてくる「楽しかったなぁ」というアレとまったく同じ気持ちを取り戻せるのがこの映画。

とにかく濃い。今石洋之×中島かずきが手がけた前作にあたる『キルラキル』で第3話までがあまりに濃い密度の情報量と展開で話題になったけど、同作がその後は比較的スピードを緩めたのに対し、『プロメア』は2時間という時間制約もあるためか最後までフルスロットル。今石中島作品にお馴染みのどんでん返しに次ぐどんでん返しのような構成も健在で、後半「お、ぼちぼちこれはラストの展開かな〜」と4回ぐらい思っては裏切られてを繰り返し、おいこれ2時間尺だぞわかってんのか???という気持ちになった。おかげで様々な設定やらキャラクターやらがちょいちょい出てきたと思ったら矢のように去っていくし、その後救済があるかと思ったら何もないみたいなすごいことになっていたりもする。今回は3Dをかなりふんだんに用いていることもあってか、『グレンラガン』『キルラキル』と比べると画面が非常にカラフルでおしゃれで、視覚的な情報量の多さもまた楽しめる。情報量としては本編開始前に半クールぐらいあってもおかしくないと思わせ、本編の展開が尺あれば1クール以上は必要だろうという密度なので、タイトル通り2クールアニメにも転換できる作品だと思っている。実際のところ、鑑賞後はやけに長い1日だったなぁという感覚があり、時間の感覚がなんだかおかしくなってしまっていた。

Image from Gyazo

キャラクタービジュアルが公開されたときから、主人公のガロ・ティモスがカミナに似ているという指摘が結構あったと思うが、実際のところ酷似とまではいかないが、予告編にあるように見得を切ることを好んだり、壮絶な殴り合いのシーンがあったりなど、似ている点は少なくない。また全体的な構成も『グレンラガン』を彷彿とさせる部分があったりするので、明言されてはないがセルフオマージュなのではないかなとすら思わせる。何より熱くて理屈が通っているんだか通っていないんだか訳がわからない。『キルラキル』にも熱さはあったが、本作におけるそれは「無理を通して道理を蹴っ飛ばす」類のもので、中島かずき特有のSF的なギミックと、それが人間的な熱意によって圧倒されていく爽快感を、どこか懐かしく見届けることができる。ふとした瞬間にガロの中にカミナを見るので、なんとなくラストバトルあたりでは『グレンラガン』のカミナ生存ルートはこんな感じだったのかもしれないと思わされてしまい、少し切なくなってしまった。最もグレンラガンっぽさを感じる展開が最後の最後にあったりするんだが、それはさすがに伏せておく。中島かずきが好む歌舞伎的な手法も相まって、この今石×中島作品が持つ、他にはない突き抜けた熱量は、どこか伝統芸能のようにすら感じられるようになってきた。

Image from Gyazo

俳優によるキャスティングもマッチしていたが、特筆するべきは堺雅人で、『リーガル・ハイ』などでインパクトのあるとんでもない芝居をする人だなということは知ってはいたものの、本作でそのもう一段「上」の演技を垣間見られた。ここまでやるとは思っていなかった。後半はかなり目まぐるしく展開が移り変わっていき、様々なものがぶつかり合って最終的に一つの結末へと収束していくわけなのだが、それを支えたのが堺雅人の、展開に合わせて緩急を自在に操る演技にあったように思う。時間があればもう1回は見に行きたいのだが、その目的として「堺雅人が見たい」と挙げられるくらい。

とにかく、今石×中島作品の魅力が熱気がこれでもかと濃縮され、さらに堺雅人らのキャスティングなどにより、新たな魅力も加えられた超絶ハイカロリーな2時間である。これを2時間に詰め込んだのは良い意味で狂気を感じるし、ストーリーの展開もある種の狂気に満ちている。


映画『プロメア』本予告 制作:TRIGGER  5月24日〈金〉全国公開